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映画「永遠のジャンゴ」を見て感じた幾つかの疑問(何故ステファン・グラッペリが出ないのかなど)

 
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団塊世代ど真ん中です。 定年退職してからアルト・サックスを始めました。 プロのジャズサックス奏者に習っています。 (高校時代にブラスバンドでしたけど当時は自分の楽器を持っていませんでしたので、それっきりになりました) 主にジャズについて自由に書いています。 独断偏見お許しください。

 

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映画「永遠のジャンゴ」を観ました。

ジプシー・スイング・ジャズの創始者ジャンゴ・ラインハルトの一時代を描いた映画です。

(Django Reinhardt, 1910年1月23日 -1953年5月16日、43歳没)

ここでは、映画のこと、その出来栄えとかではなく、一音楽ファンとして気づいたこと、初めて知ったことなどを書きたいと思います。

とは言え、まずは映画の予告編をアップします。

この予告編で、大体どのような映画であるかは分かって頂けるでしょう。

予告編の最後の言葉 

「絶望の時代に音楽だけが、未来を照らした」

この言葉は、映画の宣伝マンが考えた言葉かも知れませんが、音楽の意味を端的に表すものとして、この1行だけで素晴らしい!と思いました。

予告編にある通り、ナチスドイツの時代の迫害に対してジャンゴがどう生きたかを描いたものです。
(戦争の時代に限定して描いていました。ジャンゴの全生涯を描いたものではありませんでした)

映画の演奏は誰がやっているのか?

◯ジャンゴの不自由な左手の奏法についても、ちゃんと映像化されていました。

 

 

ジャンゴは18歳の時の、左半身大火傷が原因で
左手の2本の指が使えないというハンディキャップを負っていました。

◯使われているギターもサウンドホール(ボディの穴)が極端に小さいジャンゴ・スタイル・ギターになっていました。

◯演奏シーンで使われている音楽は誰が演奏しているのだろうと思って観ていました。(ジャンゴの実際の音源をリマスターして使用、などでは無いことは分かりました)

*但し、最後のエンドロールで流れた音楽がジャンゴ・ラインハルト本人のものであることは、はっきり分かりました。

家に戻ってAmazonでサウンドトラック盤を調べました。

レビュアーの方が書いてあったので、ローゼンバーグ・トリオが演奏していることが分かりました。

ジャンゴ・ミュージックを再現するには彼らほど適任な人たちはいないと思います。
ローゼンバーグ・トリオというかストーシェロ・ローゼンバーグ個人ですが。
*最近はストーケロと呼ぶようです。おそらくそれが正しいのでしょうね。

ジャンゴ⇒ローゼンバーグ・トリオについては私のブログでは既に

ジャンゴ・ラインハルト:不世出のジプシー、ジャズ・ギタリスト、そしてその影響を受けたジャンゴ・フォロワー達  ⇨ に書いています。

そして、その演奏もアップしていますので良かったら参照下さい。

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ステファン・グラッペリが登場しないのは何故か?

私の知識ではジャンゴと言えば、ステファン・グラッペリ(ヴァイオリン)との共演でした。

◯持っているCDも一番はこれです。「ジャンゴロジー」

これは1949年にローマで私家録音されたものでジャンゴとステファン・グラッペリ、あとは地元のミュージシャンです。音は良くないですがジャンゴの名盤として有名です。

◯次にこの2枚組CD。こちらはフランス・ホット・クラブ五重奏団のコンピレーション・アルバムです。こちらは1930年代後半~40年代中頃の演奏です。

オビに隠れて見えませんが左端にヴァイオリニスト、ステファン・グラッペリが写っています。タイトルにちゃんとDjango Reinhardt & Stephane Grappelli with The Quintet of The Hot Club of France と書いてあります。

これ↓ですね。

私にとってフランス・ホット・クラブ五重奏団とはジャンゴのギターとグラッペリのヴァイオリン、それに2本のリズムギターとベースという編成でした。

ところが映画ではグラッペリの代わりにクラリネット奏者が入っていました。

グラッペリのことは名前こそちらっと出ましたが、演奏シーンはありませんでした。

あのハンサムなグラッペリをどんな役者がやるのかな?と思ってましたので拍子抜けするとともにどうして出番がないのかを調べました。

戦争の影響での何かの事情があったのだろうと予想はしていました。

Wikipediaで「フランス・ホット・クラブ5重奏団」を見るとそこに関する記述がありました。

1939年9月に第二次世界大戦が勃発したとき、楽団はイングランドをコンサート・ツアー中だった。英語をほとんど話せなかったラインハルトは、フランスに戻った方がイギリスにいるより安全だろうと考えて、直ちにフランスに戻った。しかし、グラッペリは、そのままイングランドに残った。

その後もジャンゴは、クラリネット奏者と通常のリズム・セクションからなるまったく別の楽団で五重奏団の名義を使用し続け、初代のクラリネットはユベール・ロスタン (Hubert Rostaing) が起用され(後に数人が交代)、リズムギターは、ジャンゴの息子であるルソン・ラインハルト (Lousson Reinhardt) や、弟のジョゼフが務めた。この編成の楽団は本来のクインテット(五重奏団)ではなく、しばしば6人編成となったが、通常は「ジャンゴ・ラインハルトとフランス・ホット・クラブ五重奏団 (Django et le Quintette du Hot Club de France)」として、時にはジャンゴの「新五重奏団 (Nouveau Quintette)」として宣伝された。戦時下の物資不足のため、この編成の楽団による録音はあまり多くないが、ジャンゴ・ラインハルトが作曲し、後にジャズ・スタンダードとなった「ヌアージュ (Nuages)」の初録音などが残されている。

引用が長くなりましたが、この映画はちょうどステファン・グラッペリがバンドを離れていた第2次世界対戦下の時代を描いているためグラッペリの出番がなかったということのようです。

*要は私の知識不足だった訳です。熱心なファンの方は周知のことなのでしょうね。
*ジャンゴに集中する映画として、グラッペリの不在は好都合だったのかもしれません。

何故こんなにこだわるのかと言うと、やはりグラッペリとの共演が好きだからです。

*弦だけの五重奏団はジャズでは非常に珍しいことです。

マイナー・スウィング

おそらく一番有名で、映画でも使われていた〈Minor Swing〉をジャンゴ&グラッペリで聴きましょう。

ファ#、ラ、ド#、シ、レ、ファ#
ファ#、ラ、ド#、シ、レ、ファ#
ファ#、ラ、ド#、シ、レ、ファ# と3回繰り返すだけ、それを2回やって
(*key by alto sax)

その後ベースがドーンと入って、後はもうアドリブというシンプルさです。

ジャンゴとグラッペリが作ったというんですが、こんなシンプルな構成で、こんな有名曲になるんですねぇ。

 

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ジャンゴのレクイエムとは?

映画でジャンゴがパイプオルガンを弾くシーンがありました。

そして最後に、確かジャンゴが「レクイエム」を作っていた、と説明されました。
その楽譜はほんの1部しか残っていないとも言っていました。

そんなことは初めて知りました。

ネットで調べましたが、めぼしい情報はありません。

YouTubeに映画で流れた音楽がアップされています。

この音楽が流れている間、おそらく迫害されて亡くなったロマ(ジプシー)の人たちの数多くの写真が映されていました。

ジャンゴがレクイエムを作ったのであれば、彼ら同胞へのレクイエムという意味だったのでしょう。

まとめ

◯映画ではドイツのことを(正確にはナチスドイツをということですが)徹底的に悪く描いていましたから、この映画はドイツでの上映は難しいですね。何かドイツ人が皆悪人のような描かれ方だと感じました。

*ジャズにおけるドイツ人の貢献(例えば、アルフレッド・ライオン、マンフレッド・アイヒャー)を高く評価している筆者としては複雑な気分。

◯贅沢を言わせてもらえば、せっかくストーシェロ・ローゼンバーグというジャンゴの音楽を演るのに最適な人を得た訳ですから、1曲たっぷりと聴かせてくれるシーンが見たかったという思いは残りました。

●ジャンゴ・ラインハルトという不世出の音楽家が、ただでも差別の対象であったジプシー出身である上に、ナチスによる迫害という時代をどう生きたか、そして音楽とは人間にとって何なのか?を考えさせられる映画でした。

俺はミュージシャンだ。演奏するだけさ」ーーそれすらも困難な時代に生きた音楽家。

 

◯映画は1945年パリ解放の時点で終わりましたが、私たちはその後のジャンゴの活躍も知っています。グラッペリとの共演も再開され、アメリカにも招かれて世界的に有名になりました。

しかしその時間は長くはなく8年後1953年に43歳で亡くなります。
死因は脳溢血とのことですが、先に書いた火傷の後遺症(頭痛など)にもずっと悩まされていたそうです。

◯最後にひとつだけ。映画では、みんながいつも煙草を吸っていました。

最後まで読んでくださってありがとうございます

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