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ジャズ漫画『BLUE GIANT』主人公・大の楽器テナーサックス、練習方法など徹底解説

 
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団塊世代ど真ん中です。 定年退職してからアルト・サックスを始めました。 プロのジャズサックス奏者に習っています。 (高校時代にブラスバンドでしたけど当時は自分の楽器を持っていませんでしたので、それっきりになりました) 主にジャズについて自由に書いています。 独断偏見お許しください。
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ビッグコミックに連載中の、石塚真一が描くジャズ漫画「BLUE GIANT」がブレイクしてますね。

私も、ついに既刊単行本(今8巻まで)を買って、通して読みました。

 

主人公がテナーサックス吹きという設定が私には特に嬉しいことです。

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BLUE GIANT というタイトルのこと

初めてこの漫画を見た時、BLUE GIANT というタイトルについて、こんなことを思いました。

BLUE TRAIN

BLUE TRAIN

GIANT STEPS

GIANT STEPS

コルトレーンの名作、「BLUE TRAIN」と「GIANT STEPS」の2作のタイトルから合体したものなんだろうな、と思ったのです。

ところがそれは誤解でした。
第3巻で「ブルー・ジャイアント」の意味が説明されていました。

「あまりに高温なため赤を通り越し、青く光る巨星。青色巨星のことです」

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「若い頃、仲間うちで、世界一輝くジャズ・プレイヤーを『ブルージャイアント』と呼んでました」

ということでした。「ブルージャイアント」という言葉があることは全然知りませんでした。

*最初に挙げたコルトレーンの2枚のアルバムはどちらも、コルトレーン入門、ジャズ入門にもバッチリの名盤です。

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ところで、この漫画を読んでいて、余りジャズやサックスに詳しくない方には「ん?」という部分もあるかと思います。

私が分かる範囲で、出来る限り説明させて頂きます。

分かっている方には余計なことでしょうが、知らない方は参考にしてください。

コメントするのは、ジャズ または サックス についてのみです。

マンガ については「絵がいまいちうまくないですね」とか「顔が同じようで見分けがつきにくい時がある」なんてコメントは書きませんので^^

 

サックスのリードのことなど

 

さて、第1巻。
最初のぺ-ジ(導入)がマウスピースにリードを装着するシーンというのも、本格的ジャズ漫画を予感させるいい始まりかたですね。
このリードについては
こちらの記事→アルトサックス      で詳しく書いていますので良かったら参照ください。

*マウスピースにリードを装着し、そのリードの振動で音を出す、というのがサックスの基本構造です。

そして、このようにリードを使う楽器は全て木管楽器です。 テナーサックスも管体は金属でも木管楽器なのです。

 

私の記事ではアルトサックスのリードが1枚300円くらいと書いていますが、テナーサックスのリードはひと回り大きいのでもう少し高いようです。 第1巻で主人公・大が「10枚で5千円弱…でかいよな―…」とつぶやいてますね。 大が使っているのはRICO Jazz Selectの3番のようですね。

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ちなみに「3」 というのは硬さのことで、標準的~やや硬め というところでしょうか。Jazz Select なら3 の中にもS(soft),M(medium),H(hard)と3種あるはずです。

*管理人が使っているリードは一番柔らかい2S です。(アルトサックス)

大が使っている楽器が、どのメーカーのテナーなのかが、最初から気になっていたのですが、それは後で分かりますので、また後で触れます。

大の練習方法

◎大は河川敷で一人でひたすら吹くという練習をしてます。
これは始めの音出しとしてはいい方法です。

屋外、特に河川敷のような所だと、自分の出す音が、室内などに比べると、ずいぶん小さく聞こえます。
だから、自然と大きな音を出すようになるのです。
それはすごくいいことだと思います。

 

◎大は譜面なしで練習してますね。

ふつう、管楽器を始める人はブラスバンドとかで始める人が多いので、当然楽譜を見ながらの音出し練習になります。
大はiPodで過去の有名ジャズマンの音を聞きながら真似して音を出しているようですね。

いわゆる「耳コピ」という練習方法です。ーー聞いた音をそのまま出す練習。
これもまた、先のことを考えると、いい練習方法なのです。
譜面を見ていると、譜面がないと吹けない、ということになりがちです。
特にジャズ奏者を志すのなら、「譜面に頼らず聞いた音を出す」という練習は将来かなり有利になります!

第1巻ではジョニー・グリフィンの「リトル・ジャイアント」などを聞きながら耳コピしてますね。
このグリフィンのサックスの咥え方(アンブシュア)、口の形が、後に油井先生から指摘されることになるのですが、良いサックスの咥え方なんですねー。

このアルバムから1曲聴いてみましょう。

曲は〈Venus And The Moon〉
編成は6重奏団(テナーサックス、トランペット、トロンボーン、ピアノ、ベース、ドラムス)ですが、グリフィンの太い音のソロを聴くことができます。

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大の初ライブ

第1巻の第6話で早くも大の初ライブが描かれます。

Jazz Bar ♪Bird♪ という小さな店です。「バード」は勿論あのチャーリー・パーカーのあだ名です。

この初ライブがですね。何とウタバンなんですね。(歌の伴奏)

何でまたそんな設定と思いましたよ。ウタバンは難しいことです。

大はスケール(音階)のことも知りません。

歌の場合、曲(ここでは「イパネマの娘」です)に対して歌手の選ぶキー(音程)が決まります。

 みなさんがカラオケで歌う時に、原曲キーが決まっているのですが、自分の出しやすい音程に合わせてキーを変更できたりしますよね。あれと同じです。歌手とバンドは「じゃあ、キーはFで」とか言ってキーを決めて始める訳です。

ウタバンの伴奏バンドは、あらゆるキーに対応したスケールですぐに対応できないといけないのです。

プロ歌手が「半音下げて」なんて言えば「はい、はい」と即対応できないとウタバンはできないのです。

大はそれも知らないので、当然調子外れな音を出してしまいます。
で、バンドの方が大に合わせることになってしまってます。
ピアノの人が「Gに移調でどうだ」とつぶやいてます。

しかしこれでは、かんじんのヴォーカルの人が困っちゃう訳です。

しかも音がでかすぎて、文句を言われるハメになります。bluegiant18

ウタバンで無ければ、もう少し話が簡単だったんですけどね。

「イパネマの娘」のおそらく一番有名な演奏、アストラッド・ジルベルトの歌にスタン・ゲッツが伴奏する映像を見ましょう。

(懐かしいーですよ)

なんかほのぼのしちゃいますね。
この映像は映画からの映像みたいですね。 ゲッツの横でヴァイブ叩いているのはゲイリー・バートンではないでしょうか?

 

音楽理論~テナーサックスとは (第2巻)

 

第2巻になって、大にありがたい先生が現れます。 アメリカのバークリー音楽院を出た油井という人物が月謝なしで教えてくれることになるのです。 で、ここから音楽用語がたくさん出てくることになります。

ドミナント
ドリアン
ミクソリディアン・・・・

 

◎それよりも、そもそもテナーサックスという楽器について、すこし勉強しましょう。

テナーサックスの楽器のキーはB♭です。

「ん?何それ?」という方もいますよね。

楽器をやっている方は分かると思うんですが。

えー、いわゆるC調の楽器(ピアノのことと思ってください)
を基準に各楽器に対して、このように固有のキー名 があります。

テナーサックス、ソプラノサックス、トランペットなどのキーはBフラットなのです。
下の写真を見てください。

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ピアノで上の図の©を弾くと ド の音ですよね。

テナーサックスでドの音を吹くと、ピアノの シ♭(黄色)=B♭ の音が出ます。

ついでにアルトサックス(バリトンサックスも同じです)にも触れますが、
こちらはE♭の楽器ですので、アルトで ド を吹くとピアノのミ♭(緑)=E♭ の音が出ます。 

もしこの3つの楽器が(楽譜を見ながら)合奏しようとすると、それぞれの楽器のキーに合った移調譜が必要になります。

なんで、そんな面倒なことになっているのか、全部C調にチューニングされていれば、ひとつの楽譜で済むのに、と思いますよね。
みんなそれぞれ 「ドー」 とやれば音が合うのだから便利ですよね。

私もそう思います。ホント面倒です。
〈ロックバンドなどで、ギター、ベースギター、(ピアノorキーボード)、ドラムみたいな編成だとそれが可能なんですよね。(楽そうでいいなー)〉

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それぞれの楽器の事情というものがあるようです。このへんは深入りは避けます。
(*C調のサックスなども作られたようですが、結局主流になることはありませんでした)

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◎ひとつだけ当たり前のことの確認です。
サックス(などの管楽器)は単音楽器です。ピアノやギターのように「ジャーン」と和音を出すことができません。

◎この辺の音楽理論や先ほどのミクソリディアンなどの音楽用語について詳しく知りたい方は本で勉強して頂くしかないのですが、面白く書いてあって読みやすいという意味で菊池成孔氏の本がおすすめです。

えー、話がむつかしくなってきたので、2巻のはじめ第9話で大が好きな女の子 舞ちゃんにヘッドフォンで聞かせる音楽を聴きましょう。

ジョン・コルトレーンの〈BLUE TRAIN 〉の中の1曲〈Moment’s Notice〉です。

このアルバムは1957年9月の録音ですが、今聴いても充分にカッコいい音楽です。
メンバーはジョン・コルトレーン(ts)、リー・モーガン(tp)、カーティス・フラー(tb)、ケニー・ドリュー(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリ-・ジョー・ジョーンズ(ds)です。

大のサックスはセルマー だった

読み始めた時から大のサックスがどのメーカーのものか気になっていました。

YAMAHA?  それとも YANAGISAWA?

そしたら第16話のアタマでSELMER であることが分かりました。

selmer super action 

世界で一番有名なサックスメーカー、セルマーのSuper Action 80  シリーズと分かりました。 ネットで見ると大体60万円弱の値段のものです。

セルマーはフランスのメーカーなので、Made in France の刻印があります。
ただアメリカでノックダウンされた、俗に「アメセル」というものもあって、これも部品はフランス製であることから、同じ刻印が入っているらしいです。

本当のフランス製かアメセルかの見分けは結構難しいようです。
ただ、アメセルが劣っているという訳ではなく、音の好みの問題らしいですよ。 大のセルマーもどちらかは分かりません。

大のお兄さんがその店で「一番いいやつ」と言って買ってくれたのですが、51万6千円でしたね。bluegiant12

曲のテンポの設定(BPM)

第13話の5ページ目で、大がスマホのメトロノーム・アプリ(?)にテンポを130と設定するシーンがあります。
テンポのことをBPM(Beats Per Minute)といいます。

BPM=130とは1分間に4分音符が130回の速さということです。(130はMedium Swing くらいの速さでしょうか)

1秒に4分音符2回より少し速いということですね。

私は使ったことがないのですが、多分ピ、ピ、ピ・・という電子音がでているのでしょうね。

バラードだと60~80くらいですかね。

追記――楽器の略号

ジャズ演奏で使われる楽器の表記の仕方を書いておきます。
ジャズを聴いてある方には周知のことでしょうが、慣れてない方はもしかしたら、わからないかもと思い追記します。

ts:テナーサックス 
as:アルトサックス
ss:ソプラノサックス
bs:バリトンサックス
p:ピアノ
b:ベース
ds:ドラムス
tp:トランペット
tb:トロンボーン
fl:フルート
flh:フリューゲルホーン
g:ギター
vib:ヴァイブラフォン
vo:ヴォーカル

とりあえず、このくらいでしょうか。

ここまで読んで下さってありがとうございます

この後3巻以降を読んで書いた記事がありますので、良かったらご覧ください。
こちらからどうぞ———- BLUE GIANT 3巻~7巻徹底解説⇒

 

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