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車谷長吉は凄いです。一度は読みたいその代表作は「鹽壺の匙」

 
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団塊世代ど真ん中です。 定年退職してからアルト・サックスを始めました。 プロのジャズサックス奏者に習っています。 (高校時代にブラスバンドでしたけど当時は自分の楽器を持っていませんでしたので、それっきりになりました) 主にジャズについて自由に書いています。 独断偏見お許しください。

 

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2015年5月に69歳で亡くなった車谷長吉
(くるまやちょうきち ではなく くるまたにちょうきつ

出典:https://twitter.com/tyoukitu_bot

車谷長吉の代表作

その代表作と言われる一冊がこの鹽壺しおつぼさじ

裏カバーに

『反時代的毒虫が二十余年にわたり書き継いだ、生前の「遺稿」6編。
三島由紀夫賞受賞。』

 

と、書いてあります。

確かにこの1冊が車谷の代表作と言ってよい作品でしょう。

*古めかしい言葉を使ったり、まるで大正~昭和初期の私小説作家のような書きぶりなのですが、
不思議なことに非常に読み易いのです。

それは多分文章のリズムがいい、車谷が自分のリズムと文体を持っているからだと思います。

そのリズムと文体は車谷が独自に編み出したもののように感じます。

一般的小説表現とはかなり異なっているところが多いのです。

*私は最近西村賢太を良く読んでいたのですが、文章のたくみさで言えば、車谷のほうが遥かに独自の文体をもっていたようです。

*各作品に共通する表現(祖母が闇の金貸しだった、叔父の自死、持病のことなど)があることから、まぎれもなく私小説と言ってよいと思いますが、これはまたものすごい私小説を車谷は書いたものです。  

車谷の毒を吐いているような文章を読むと、西村賢太の自嘲はまだ可愛いものだったと思ったりもします。

*「萬蔵の場合

 「吃りの父が歌った軍歌

の2編は特に印象に残りました。
(印象に残ったーという陳腐な表現が恥ずかしくなります^^)

この平成の時代に、あえて読まれるべき作家だと思います。

*巻末、吉本隆明による「私小説は悪に耐えるか」という解説が「超力作」です。

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車谷のおすすめエッセイ

副読本として併せて読むとしたら、こちらのエッセイ集がおすすめです。

以下筆者がAmazonレビューに書いた文を引用します。

車谷長吉のエッセイ集である。
一読、これは一体だれが読むのだろうと思った。
今の若い人がいう「リア充」な人の頭には、車谷が書くことは入ってこないだろうと思う。

しかし閉塞感極まる平成の時代、この文章が救いと感じる人たちも(少数かもしれないが)いるはずだと思いなおした。

『詩や小説を書くということは、この競争社会においては、はじめから己れを見捨て、息を詰め、ドン尻を死に向かって歩いて行く、と言うことではないだろうか』
と書く人の文章である。楽しいはずがない。救いもない。その救いがないというところに惹かれる人がいると思う。

また、自分の持病について書いてある部分も興味深い。

車谷さんとしてはちょっと珍しいかな?という文章に巡り合ったので以下引用。

『一度あの女と話がしたい。一度でいいから、話がしたい。しかしそれが実現すると、こんどは話をするだけでは満足できない。一遍でいいから手をにぎりたい。しかしそれが実現すると、その次は手をにぎるだけでは物足りない。抱擁したい。キスしたい。それが実現すると、キスだけでは満たされない。もっと、とのぞむ。さらに、とねがう。可能ならば、まぐわいをしたいと欲望する。したくて、したくて、身悶えする。
一度でいいから、まぐわいしたい。しかしそれが実現すると、まさにその瞬間、満足は零になる。零どころか天秤はひっくり返って、むしろ失望する。幻滅する。それが人生の恐ろしさであり、快楽であり、人という生き物の業である。』

車谷さん、こういう面もあったのですね。

おわりに

 

車谷長吉は一部の人には有名でしょうが、それほど多くは読まれていないと思い、この紹介文を書きました。

作品数も多くはなく、上に書いたようにもう亡くなりましたので、下手をするとこのまま忘れ去られていく作家かもしれません。

*最近奥さんであった高橋順子さんが書いた本が出版されています。

筆者は未読ですが、車谷との出会い、結婚生活を書いてあり、大変面白そうです。

作家・車谷長吉を支えた妻が振り返る「結婚生活は修行のようでした」

●簡単ですが、作家車谷長吉を紹介しました。

追記:直木賞受賞作「赤目四十八瀧心中未遂」

・・・と書いたのですが、やはり直木賞受賞作である「赤目四十八瀧心中未遂」を読むとこれもまた凄い小説だと、心震えるような思いになる作品でした。追記して合わせて推薦します。車谷は一作読んで済ませられるような作家ではないのですね。

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