ジャズの名盤:ROOTSルーツというバンドがあったことを、その代表作Stablematesという素晴らしいアルバムを詳しく聴こう
ROOTSというジャズのバンドですが、アーサー・ブライスやドン・プーレンを中心に結成され’90年代初めに活動しました。
フリージャズもやれるメンバーが集まって、ストレ-ト・アヘッドに正統ジャズをやるという素晴らしいバンドでしたが、残念ながら長期的には持続できなかったようです。
いま、ネットで検索してもThe Rootsというヒップホップ・グループばかりが表示され、ほとんど情報がありません。忘れられた存在となっているようです。
筆者が知る限りIN +OUTというマイナーレーベル(ドイツ)から4枚のアルバムが出ただけです。
その4枚も廃盤となり中古盤は高値となり、入手困難な状態が続いていました。
ところが最近Amazonで調べると2枚が再発されたようで、入手可能となっています。
それからあと1枚DIZ&BIRDというアルバムがAmazonのストリーミングで聴くことが出来るようになっています。
それはこれです。
⇒ https://www.amazon.co.jp/music/player/albums/B01MYMBU2J?do=play
CDで入手可能になった2枚は以下です。
いずれも素晴らしいアルバムです。
今日は STABLEMATES について詳しく見て行きたいと思います。
アルバムのタイトル、Stablemates は勿論ベニー・ゴルソンが作曲した曲のことで、この中でも演奏されています。
筆者は「ジャズの名曲シリーズ」としてこの曲の様々な演奏を取り上げています。
⇒ Stablemates「ステイブルメイツ」ベニー・ゴルソン作曲、 12バージョンを聴きます
Contents
- 1 メンバーと収録曲
- 2 各曲を聴こう
- 2.1 Stolen Moments ストールン・モーメンツ
- 2.2 Linden Boulevard リンデン・ブルーバード
- 2.3 Requiem For A Rabbit レクイエム・フォー・ア・ラビット
- 2.4 Night Train ナイト・トレイン
- 2.5 I Remember Eric Dolphy アイ・リメンバー・エリック・ドルフィー
- 2.6 Stablemates ステイブルメイツ
- 2.7 Ah,George,We Hardly Knew Ya アー、ジョージ、ウィ・ハードリー・ニュー・ヤ
- 2.8 Walkin’ ウォーキン
- 2.9 The Party Is Over ザ・パーティー・イズ・オーヴァー
- 3 まとめ
メンバーと収録曲
STABLEMATES / ROOTS
◆アーサー・ブライス Arthur Blythe (as,ss)
◆ネイサン・デイヴィス Nathan Davis (ts,as,ss)
◆チコ・フリーマン Chico Freeman (ts,as,ss)
◆サム・リバース Sam Rivers (ts,ss)
◆ドン・プーレン Don Pullen (p,organ)
◆サンティ・デブリアーノ Santi Debriano (b)
◆アイドリス・ムハンマド Idris Muhammad (ds)
*4人ものサックス奏者を揃えています。
1.Stolen Moments
2.Linden Boulevard
3.Requiem For A Rabbit
4.Night Train
5.I Remember Eric Dolphy
6.Stablemates
7.Ah,George,We Hardly Knew Ya
8.Walkin’
9.The Party Is Over
各曲を聴こう
このアルバムの企画ですが、ROOTSの各メンバーが自分の思う人に、捧げたい曲(スタンダードかオリジナル曲)を捧げるという趣向になっています。
Stolen Moments ストールン・モーメンツ
作曲:オリバー・ネルソン
捧げる相手:オリバー・ネルソン
捧げる人:ネイサン・デイヴィス
solo: Davis,Rivers,Pullen
● オリバー・ネルソンの名盤「ブルースの真実」でも演奏されたお馴染みの曲です。
ROOTSは最初のテーマ・アンサンブルを忠実に再現しますが、ネイサン・デイヴィスのソプラノサックスによるソロになると新しさを感じさせます。プーレンのピアノソロも見事です。
改めてこのブルース曲の良さを再確認することになりました。
Linden Boulevard リンデン・ブルーバード
作曲: サンティ・デブリアーノ
捧げる相手:アーチ―・シェップ
捧げる人: サンティ・デブリアーノ
solo:Freeman,Rivers,Pullen
● ベースのデブリアーノのオリジナルです。アーチ-・シェップがデディケートの相手です。
ハードボイルドなテーマがシェップらしいです。いい曲ですね。
フリーマンのテナーのソロも曲調に合って好きです。
Requiem For A Rabbit レクイエム・フォー・ア・ラビット
作曲:チコ・フリーマン
捧げる相手:ジョニー・ホッジス
捧げる人:ネイサン・デイヴィス
solo: Freeman,Blyth,Debriano
● ジャズ界でラビットと言えばホッジスです。
チコ・フリーマンがオリジナルを書きました。ホッジスへのレクイエム。
フリーマンがテナーでソロを吹いた後、アルト吹きだったホッジスのためにブライスがアルトでソロを。デブリアーノのベース・ソロも秀逸。
Night Train ナイト・トレイン
作曲:ジミー・フォレスト
捧げる相手:ジミー・フォレスト
捧げる人:チコ・フリーマン
solo:Debriano, Freeman,Davis,Pullen *この曲だけギターのHelmut Nieberle が入ります。
● 「ナイト・トレイン」はオスカー・ピーターソンが弾いて大ヒットさせました。しかし曲を作ったのはジミー・フォレストでした。フォレストは筆者も大好きな風格あるテナーマンです。
全員でのテーマ合奏が豪華絢爛!。フリーマン、デイヴィスのソロのカッコいいこと!
この演奏には参ります。
I Remember Eric Dolphy アイ・リメンバー・エリック・ドルフィー
作曲: ネイサン・デイヴィス
捧げる相手:エリック・ドルフィー
捧げる人:ネイサン・デイヴィス
solo: Davis,Pullen,Debriano
● ネイサン・デイヴィス ! この曲とその演奏には痺れました。
ゴルソンのIRemember Clifford にも負けないくらいの名曲ではないですか。またソプラノによるソロの素晴らしいこと。プーレンもこんな美しい演奏が出来る人なんですよね!
誰かカバー演奏をしたらいいのに!と思いました。
Stablemates ステイブルメイツ
作曲: ベニー・ゴルソン
捧げる相手:ベニー・ゴルソン
捧げる人: 全員
solo: Davis,Blyth,Pullen,Freeman,Rivers
● ゴルソンのオリジナル演奏ではゴルソン自身のいぶし銀テナーとフィーチャーされるリー・モーガンのペット演奏が焦点だったように思いますが、その辺はいかにと思いながら聴きました。
当然ROOTSにはペットはいないので、アルトorソプラノで演奏されたようです。
アンサンブルをキレイに聴かせる演奏になっていました。ムハンマドの強いドラムも利いていますね。
Ah,George,We Hardly Knew Ya アー、ジョージ、ウィ・ハードリー・ニュー・ヤ
作曲:ドン・プーレン
捧げる相手:ジョージ・アダムス
捧げる人: ドン・プーレン
solo: Blyth,Pullen
● プーレンの盟友、ジョージ・アダムスは1992年11月14日に52歳で亡くなりました。この録音がされたのは同年12月14&15とありますので、ちょうどアダムスの死の1か月後ということになります。
プーレンはアダムスの1歳年下でした。そしてプーレン自身もこの3年後に53歳で没することになります。
それにしても悲しくも美しい曲です。哀愁と悲しみと激しさにも満ちたテーマです。
そしてアーサー・ブライスのソプラノ・サックスが見事な演奏です。悲しみだけでなく怒りにも似た激情を感じさせます。
もちろん、プーレンのピアノも悲しみに満ちて美しいです。
Walkin’ ウォーキン
作曲: リチャード・カーペンター
捧げる相手:ジョニー・グリフィン&エディ・ロックジョウ・デイヴィス
捧げる人: 全員
solo:Blyth,Rivers,Muhammad,Pullen
● 一般的にはマイルス・デイヴィスの演奏で有名な曲ですが、ROOTSはグリフィンとロックジョウに捧げています。
ブライスがややフリーキーな音も混ぜながらソロ。続くリバースのソロもハードなもの。
ムハンマドのドラムソロもカッコいい。
全体にハードでダイナミックな仕上がりとなっています。
The Party Is Over ザ・パーティー・イズ・オーヴァー
作曲:スタイン、グリ-ン&コムデン
捧げる相手:レッド・ホロウェイ
捧げる人: ネイサン・デイヴィス
solo:Freman,Pullen,Kagerer *この曲だけギターのHelmut Kagerer が入ります。
● 最期を飾るのに相応しい選曲。
サム・リバースが敢えてホロウェイそっくりの音と奏法をやってくれています。
プーレンはオルガンを弾いています。それにからむギターもいいですね。
リラックスした楽しい演奏でアルバムを締めてくれました。
まとめ
本当に素晴らしいアルバムです。
ROOTSというグループ、これが長続きしなかったことが残念です。
このメンバーを見ると、フリージャズもやれる面々なですが、ROOTSでは呆れるほどストレート・アヘッドにジャズをやっていますね。
これだけの実力がある面々がフリーをやるからこそ、意味があるのだと認識を新たにしました。
こんなアルバムが埋もれていて長い間入手困難だったことにも驚きを感じます。
*最後のヴォイスはHow was that ?「どうだった?」と聞こえましたが・・・
なおこちら⇩も素晴らしいアルバムですので、同時に紹介しておきます。
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