メアリー・コクランというアイルランドの歌手が歌うビリー・ホリディ曲集は感動的
メアリー・コクラン(Mary Coughlan)という歌手がいます。
アイルランド、ケルト圏を代表する歌手です。
今日紹介したいのは彼女が歌う
『「奇跡のダブリン・ライヴ」シングス・ビリー・ホリデイ』
〈Mary Coughlan Sings Billie Holiday〉という1枚のアルバムです。
(2枚組ですが)
何故アイルランドの歌手がビリー・ホリディを歌うのか?
Contents
メアリー・コクランの人生とビリー・ホリディ
メアリーは1956年の生まれですから、今年61歳になります。
青年期から家庭内のトラブル、学校からのドロップアウトに悩む。
そのせいで、強度のアルコール依存症、ドラッグ中毒となり、入退院を繰り返した。
1985年にデビューアルバム”Tried And Emotional”を発表。
国内で10万枚を売り上げ大きな話題となる。30才を超えて、いくつかのアルバムを次々と発表、ヨーロッパ圏の評論家たちに最も評価の高いアーティストに成長。
8枚目のアルバム”After The Fall”が決定的な評価を得る。
1997年アメリカデビュー。ケルト音楽の枠を超えた大きな存在となる。
ーーーーーーアルバム・ライナーノートより抜粋引用
ビリー・ホリディ
1910年代のアメリカに黒人として生まれ、44才で亡くなったその人生はあらゆる辛酸をなめ尽くすものだった。
母子家庭に生まれ母親は売春婦。
人種差別、11才でのレイプ、アルコール依存、麻薬中毒、ついには投獄ーと人生のあらゆる苦難を経験した。
しかしそのホリディの歌声は人々の心を掴んだ。
今もなお人種、国籍を超え世界中でその歌が聴かれている。
メアリーがホリディを歌う
ホリディの「痛みを知る」メアリーがその歌を歌うのは自然の成り行きだったのかも知れません。
録音されたのは2000年、アイルランドの首都、ダブリンでのライブです。
収録曲21曲は全てホリディが愛唱していた歌。(CD2枚)
◎1曲目に入っている”These Foolish Things”をまず聴きましょう。
メアリーを迎える会場の拍手が暖かい。
バンドも敢えてビリーが生きた時代を彷彿とさせる演奏をしているのが嬉しい配慮です。
These Foolish Things
これはちょっと小手調べといった歌唱でした。
このアルバム、当日歌われた全曲を順番通りに並べてあるそうです。
All Of Me
◎本格的に歌う、”All Of Me” を聴きます。
素晴らしい歌唱です。
バンド紹介をします。
Peter O’brien-piano
Rock Fox-trumpet
Big Jim Farrelly-sax
Jimmy Faulkner-guitar
Myles Drennan-drums
繰り返しますがいいバンドです。
◎次は個人的にも好きな曲”Fine And Mellow” を聴きたいです。
Fine And Mellow
この曲は本家であるビリー・ホリディの歌唱も是非この際に聴きたいと思います。
◎1957年の動画で見ることができます。
伴奏しているプレイヤー達もビッグ・ネームです。
Ben Webster — tenor saxophone, Lester Young — tenor saxophone, Vic Dickenson — trombone, Gerry Mulligan — baritone saxophone, Coleman Hawkins — tenor saxophone, Roy Eldridge — trumpet, Doc Cheatham — trumpet, Danny Barker — guitar, Milt Hinton — double bass
レスター・ヤングの映像もそうですが、若き日のジェリー・マリガン(バリトンサックス)の姿も貴重な映像です。
Billie’s Blues
◎この調子でやっていると、全21曲をアップすることになりますので、あと1曲にします。
どれがいいか迷いますが、今も色んな人に歌われる曲”For All We Know” にします。
聴いてください。
For All We Know
おわりに
いかがだったでしょうか?
歌というのは何となく聞き流すことが多いのですが
時にはっと耳を傾けてしまう歌唱があります。
今日紹介しましたメアリー・コクランの歌声もそんな歌でした。
そして、その歌唱の背景にある事情のようなものを知ると、更に深く感情移入できます。
「ビリー・ホリディの歌」をこれほどのレベルで歌える歌手はそうはいないでしょう。
メアリー・コクランは勿論これ以外にも歌っていますので(ジャズではない歌唱も)機会があれば聴いてください。
例えばエルヴィス・プレスリーの曲「ハートブレイク・ホテル」なども歌っています。
◆こちらも併せて見て頂けると嬉しいです。
⇒ビリー・ホリディ"Lady In Satin” 晩年の作品の哀しみ
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