ジャズの名盤この1枚!:ソニー・クリス「Go Man!」
ソニー・クリス(Sonny Criss)ことウィリアム・クリス(William Criss, 1927年10月23日 – 1977年11月19日)は チャーリー・パーカー直系のバッパーです。
彼のアルトサックスの音は、勿論パーカーに似ていますが、より軽快な感じです。
しかし不思議なことに、その軽い音の中に何故か哀愁が漂うのです。
その哀愁味は後期になるほど強まるのですが、今日紹介したいのは1956年(クリス28歳時)の録音です。 ここでもさりげなく哀愁味を漂わせています。
このアルバム、クリスのほぼ初リーダー作で、出世作となったものです。
ジャケット・デザインも秀逸で、このアルバムが売れるのに一役かったことでしょう。
クリスのいいアルバムは他にも勿論あるのですが、このリーダー・デビューとも言える盤にクリスの美点が最初からぎっしりと詰まっていたように思えるのです。
ソニー・クラーク (p)
ルロイ・ヴィネガー (b)
ローレンス・マラブル (ds)
●1956年2月24日 L.A 録音
Summertime
いかがでしょうか?
この曲〈サマータイム〉の演奏としてはやや早めの演奏でしょうか?
パーカー死の翌年の録音でもあり、間違いなくパーカー派の演奏なのですが、その音色にクリスらしさが漂っていますね。
ピアノのソニー・クラークもまだ無名時代ですが、後に「哀愁のピアニスト」と呼ばれ31歳で早世したピアニストです。
引き続き2曲目に行きましょう。
Memories Of You
これは完全なバラード演奏です。
フレージング、早い運指で、たくさんの音符をたたみかけるところなど、パーカーの影響が大きいのですが、バラードの雰囲気がクリス独自の世界を作りつつあるように感じます。
パーカーをただ追随している訳ではないと感じる演奏です。
Blue Prelude
さて、筆者はこの〈ブループ・レリュード〉の短い演奏が一番好きかもしれません。
パーカーの圧倒的な影響下にありながらも、繊細さと物悲しさーー即ちクリスらしさーーをはっきりと表明する演奏に聴こえます。
後の〈Saturday Morning〉の名演に通じるものを感じるのです。
How High The Moon
一方このハウ・ハイ・ザ・ムーン ではいかにもパーカー直系と言える、アルトの音を響かせています。このように吹き方で「明るさ~哀しみ」を表現できるのがアルトサックスという楽器の特性でもありますが、その両面性を見事に表現したのが、黒人ではクリス、白人ではアート・ペッパーだと思います。
まとめ
クリスは50歳で自殺しています。
日本では長い間「初来日を直前に控えた謎のピストル自殺」と言われていましたが、
現在Wikipediaでは「病苦(胃癌)による自殺」と断定されています。
今日紹介したアルバムの後、明るい音色を生かした演奏でヒットアルバムも出しましたし(〈Up up and Away〉など)、後年の〈Saturday Morning〉のような情念に訴えるようなアルバムも作った人でした。
ソニー・クリスのその他のアルバムについて、こちらで書いていますので良かったらどうぞ
⇒ sonny criss