村上春樹の本「村上ソングズ」掲載の全29曲を聴こう(和田誠:絵)きっと好きな曲が見つかるはず!
村上春樹に「村上ソングズ」という本があります。
ソングズですから、歌詞のある曲ですね。
3分の1くらいがジャズ曲で、あとはロック、ポップスなど。
うち12曲がアメリカの雑誌「エスクァイア」に連載されたそうです。
すごいですねぇ。日本人がアメリカの曲について書いた文章が
アメリカの伝統ある雑誌に連載されるなんて。
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本の構成は、まず日本語詩(もちろん春樹さん訳)があって、英語詩、村上春樹の文章、という順で、その間に和田誠の絵が適宜散りばめられているという構成です。
村上氏所有のレコード・ジャケットの写真もちゃんと載っています。
……………………………………それで
その29曲を順番に全部聞いてみよう、という企画です。
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YouTube に全部あるかなぁ、無い場合はどうしよう。
とにかく始めてみます。
*最後の2曲は「村上ソングズ」ではなく「和田ソングズ」になっています。
Contents
- 1 ■神様しか知らない:God Only Knows
- 2 ■幸福はジョーという名の男:Happiness Is A Thing Called Joe
- 3 ■人生のイミテーション: Imitation Of Life
- 4 ■ニューヨークの秋:Autumn In New York
- 5 ■ムーンライト・ドライブ:Moonlight Drive
- 6 ■ブルーに生まれついて:Born To Be Blue
- 7 ■ジーン:Jean
- 8 ■中国行きのスロウ・ボート:On A Slow Boat To China
- 9 ■イングリッド・バーグマンの歌:Ingrid Bergman
- 10 ■ブルー・モンク(修行はつらい):Blue Monk(Monkery's The Blues)
- 11 ■この家は今は空っぽだ :This House Is Empty Now
- 12 ■パッチズ :Patches
- 13 ■眠る蜂:A Sleepng Bee
- 14 ■オキナワに戻るよ:Going Back To Okinawa
- 15 ■自活する子供を神は祝福する:God Bless The Child
- 16 ■さよならを言うたびに:Ev'rytime We Say Goodbye
- 17 ■ガルヴェストン:Galveston
- 18 ■自殺をすれば痛みは消える:Suicide Is Painless
- 19 ■孤独は井戸:Loneliness Is A Well
- 20 ■生きているうちにしたいこと:All I Wanna Do
- 21 ■ミス・オーティスは残念ながら:Miss Ortis Regrets
- 22 ■酒とバラの日々:The Days Of Wine And Roses
- 23 ■羊くん:Mr.Sheep
- 24 ■1957年のディズニー・ガールズ:Disney Girls(1957)
- 25 ■五時のホイッスル:Five O'Clock Whistle
- 26 ■よそには行かないで:Don't Go To Stranger
- 27 ■ステート・トゥルーパー:State Trooper
- 28 ■バン・バン :Bang Bang
- 29 ■誰にも奪えない:They Can't Take That Away From Me
- 30 【まとめ】
- 31 共有:
■神様しか知らない:God Only Knows
album:The Beach Boys 〈Pet Sounds〉
トニー・アッシャー:作詞、ブライアン・ウィルソン:作曲
■幸福はジョーという名の男:Happiness Is A Thing Called Joe
album:Nancy Wilson 〈But Beautiful〉
エドガ―・イップ・ハーバーグ:作詞、ハロルド・アーレン:作曲
It seems like happiness is just a thing called Joe
幸福というのは、ジョーという名の一人の男に過ぎないのだろうか
He’s got a smile that makes the lilacs wanna grow
彼が微笑むと、ライラックの花だってしっかり咲いてしまいたくなる
He’s got a way that makes the angels heave a sign
When they see Little Joe passin’ by
リトルジョーが通りかかっただけで、
天使たちだって思わずため息をもらしてしまいそう
Sometime the cabin is gloomy
ちっぽけな気の滅入る部屋
And the table is bare
むき出しのテーブル
But when he kisses her
でも彼にキスをされると
It’s Christmas everywhere
あたりはもうクリスマス
Troubles fly away
いやなことなんてどこかに吹き飛んで
And life is easy go,easy go,easy go,easy go.
あとは何しろ素敵なことばかり
Dose he love her,God
ああ、彼は私を愛してくれているのかしら?
That’s all she needs to know
彼女の頭の中にはそれしかない
Because happiness is just a thing called Joe
だって幸福とはジョーという名の一人の男に過ぎないのだから
Little Joe,Little Joe
リトル・ジョー、素敵なリトル・ジョー
■人生のイミテーション: Imitation Of Life
album:R.E.M. 〈Reveal〉
■ニューヨークの秋:Autumn In New York
「ニューヨークの秋」は有名な曲だから、勿論たくさんありますが、村上春樹氏が選んだ、テッド・ストレーター(初めて聞きました)のヴァージョンというのは余りにもマニアックで、YouTubeに無いのではないかと恐れましたが、
やはり無いですね。 そもそもテッド・ストレーターがたった1曲あるだけという惨敗です。
代打をどうしようかと考えました。歌のヴァージョンではシナトラがありますが、シナトラは後で出てきますので、ビリー・ホリディにします。
■ムーンライト・ドライブ:Moonlight Drive
ジム・モリソン、ドアーズと言えば「ハートに火をつけて」Light My Fire が余りにも有名ですが、これもいい曲ですね。
■ブルーに生まれついて:Born To Be Blue
ロバート・ウエルズ、メル・トーメ:共作
album: Helen Merrill with Clifford Brown
この曲、ヘレン・メリルの名唱は余りにも有名です。
■ジーン:Jean
ロッド・マッケン:作詞作曲
album: The Prime Of Miss Jean Brodie/ Rod McKuen
●余談になりますが、これです。^^
■中国行きのスロウ・ボート:On A Slow Boat To China
フランク・レッサー:作曲
I’d love to get you
On a slow boat to China
All to myself alone
中国行きのスロウボートに君を乗せられたらな。
そして僕だけのものにできたらな。
Get you and keep you
In my arms evermore
腕の中に君を抱いて
いつまでも離さない
Leave all your lovers
Weeping on the fareway shore
他の男たちなんぞ
岸辺で涙にくれていればいい
Out on the briny
僕らは海原の真ん中にいて
Wiith the moon big and shinny
空には大きな月が輝き
Melting your heart of stone
君の固い心を溶かしてくれる
I’d love to get you
On a slow boat to China
All to myself alone
中国行きのスロウボートに
君を乗せられたらな
そして僕だけのものにできたらな
⇒うーん、良く見るとなかなかに強烈なラブ・ソングですね。
Get you and keep you というのが男らしいですね!
で、スロウボート・トゥ・チャイナ に乗せてしまえばもうこっちのもんだという男の心丸出しですね。
彼女の心はまだ heart of stone みたいですから、とにかくスロウボートに乗せて、他の男から隔離して、自分のものにしたい!という肉食男子の恋心です。
■イングリッド・バーグマンの歌:Ingrid Bergman
album:Mermaid Avenue /Billy Bragg & Wilco
ウッディ・ガスリー:詩、ビリー・ブラッグ:曲
これは、あるかどうか心配でしたがちゃんとありました。
なかなかいいジャケットですね↓
春樹さん、、、こんなのも好きなんだ、、、
■ブルー・モンク(修行はつらい):Blue Monk(Monkery's The Blues)
album:Straight Ahead /Abbey Lincoln
アビー・リンカーン:詩、セロニアス・モンク:曲
アビー・リンカーンが歌うのは4分からですから、よろしく。
■この家は今は空っぽだ :This House Is Empty Now
■パッチズ :Patches
album:Patchies/ Clarence Carter
■眠る蜂:A Sleepng Bee
トルーマン・カポーティ:詩、ハロルド・アーレン:曲
1954年のミュージカル「我が家は花盛り」のために書かれたそうです。
album:Tony Bennett Sings For Two
*このジャケット↓いいですね。
■オキナワに戻るよ:Going Back To Okinawa
■自活する子供を神は祝福する:God Bless The Child
ビリー・ホリディ&アーサー・ハーツォグ・ジュニア共作
*この曲はスタンダード・ナンバーとなって、インストで随分聴いたように思う。Kenny Burrell(guitar)の演奏が印象に残っているかな。
■さよならを言うたびに:Ev'rytime We Say Goodbye
コール・ポーター:詩、曲
album: Duet / June Christy ,Stan Kenton
Ev'rytime we say goodbye, I die a little,
あなたにさよならを言うたびに
私は少しだけ死ぬ
Ev'rytime we say goodbye,I wonder why a little,
あなたにさよならを言うたびに
私の心は少しだけ揺らぐ
Why the Gods above me,who must be in the know,
どうして天の神様はこんなにも
私に冷ややかなのだろう
Think so little of me,they allow you to go.
あなたを行かせてしまうなんて
When you'er near,there's such an air of spring about it,
あなたがそばにいると、あなたには春の気配が満ち
I can hear a lark somewhere,begin to sing about it,
どこかでひばりも鳴き始める
There's no love song finer, but how strange the change from major to minor,
これほど美しい愛の歌はないのに
それはあっという間に
哀しみの歌に転じてしまう
Ev'rytime we say goodbye.
あなたにさよならを言うたびに
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◎この有名曲は色んな人が歌っていますが、春樹氏のセレクトはクリスティ&ケントンのヴァージョンでした。確かに心温まるような歌唱&ピアノですね。ちょっと二人が羨ましくなるような。
私が印象に残っているのは、サミーデイヴィスJr.がローリンド・アルメイダのギター1本で歌ったものと、チェット・ベイカーのsinging&trumpetです。
◎この曲を作ったコール・ポーターのことを描いた映画に「五線譜のラブレター」というのがありました。 村上春樹氏もその映画に触れています。
ただ春樹氏はポーターのことを「同性愛者だった」と書いていますが、これは春樹氏らしくない不正確な書き方だと思いました。
正確には「ポーターはバイ・セクシュアル(両性愛者)だった」と書くべきでしょう。そこがこの映画のポイントでもある訳ですから。
■ガルヴェストン:Galveston
グレン・キャンベル:詩、曲
グレン・キャンベル、ヒットしたことを覚えているのは
「恋はフェニックス」 By The Time I Get to Phoenix・・・
「ウィチタラインマン」 の2曲
「ガルヴェストン」という曲は知らなかった。
今回探しましたが、残念ながらオリジナルの歌唱は入手できませんでした。
後年のライブ動画がありましたので、それをアップします。
『ガルヴェストンはテキサス州の古い港町』で『この曲がヒットしたのは1969年の春で、ヴェトナム戦争はまさにそのピークにあった』と春樹氏が書いてる。
■自殺をすれば痛みは消える:Suicide Is Painless
映画を観たことは覚えています。(確か朝鮮戦争の部隊が描かれていた記憶があるのですが。)
春樹氏と違ってこの曲は全く覚えていなかったです。
映画のサウンドトラックから。↓
■孤独は井戸:Loneliness Is A Well
作曲:ジョン・オーバニー(ジャズピアニスト)
作詞:アイリーン・オーバニー(ジョンの奥さん) というもの
春樹氏セレクトは album:Anita O'Day At Mister Kelly's
アニタ・オディの Mister Kelly's というクラブでのライブ盤です。
私はLPレコードで持っていますが、1958年の録音です。
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Yesterday my life was lonely
きのうまで、人生は孤独だった
My face was a mask of despair.
私の顔は絶望の仮面だった
Today my world has changed for me.
今日になって世界は一変した
My well is no longer there.
井戸はもうそこにはない
Loneliness is a well.
孤独は井戸だ
A deep dark hole
where unhappiness dwells.
不幸せが住みつく、深くて暗い穴
I was lonely.
私は孤独だった
Unhappiness is a grave.
不幸せは墓所だ
A Black mound of earth
where screams are the unwanted rain.
黒い盛り土に、悲鳴が
求められぬ雨となって降る
I was unhappy.
私は不幸せだった
To be unwanted is a desperate thing.
求められることのない切なさ
A feeling of despression
that loneliness brings.
孤独はどこまで人の心を
闇に沈めていくのだろう
I was unwanted.
誰も私を求めてはいなかった
Unhappy,unwanted and lonely
不幸せで、求められず、一人ぼっち
was my conception of me
それがかって私の姿だった
until loving you.
あなたを愛するまでは
Oh the wide and new world to see.
でも世界は今、私の前に新しく開けている
I'm loved. I'm loved.
私は愛されている。私は愛されている。
■生きているうちにしたいこと:All I Wanna Do
シェリル・クロウ:曲, ウィン・クーパー:詩
album :Tuesday Night Club/ Sheryl Crow
■ミス・オーティスは残念ながら:Miss Ortis Regrets
コール・ポーター:作曲
album: Ella Fitzgerald sings Cole Porter /Ella Fitzgerald
非常に変わった歌詞の歌です。
「奥様、ミス・オーティスは残念ながら今日のランチお越しになれないとのことです」
その理由は・・・ミス・オーティスはさっき自分を捨てた恋人をピストルで撃ち殺し、警察に連行された。そして激昂した群衆が牢獄から引っ張り出して、あっさりと柳の木に吊るしてしまった・・・からだという。
そんな変な歌に優しく美しい曲を書いたのは、またコール・ポーター。
■酒とバラの日々:The Days Of Wine And Roses
ジョニー・マーサー:詩、ヘンリー・マンシーニ:曲
album:We Dig Mancini / The Anita Kerr Quartet
■羊くん:Mr.Sheep
正直に書きますが、この曲の良さは分かりません。
「何これ?」という感じです。こういうことは非常に珍しいことです。
多分、アメリカという国に相当深くコミットしないと分からないのかも知れません。
あるいはずっと「羊」に拘ってきた春樹氏ゆえのセレクトだったのでしょうか?
■1957年のディズニー・ガールズ:Disney Girls(1957)
ブルース・ジョンストン:作詞作曲
album: Going Public / Bruce Johnston
これは前のと違って、良く理解できる美しいバラードです。(良かった)
歌詞もいいのですが、長いので、途中の一節のみ紹介します。
↓この部分は本当に ノスタルジックで、センチメンタルで、ロマンティックです。
パティ・ペイジが出てくるところなど最高です。
Patti Page and Summer days
パティ・ペイジと夏の日々
On old Cape God
懐かしの ケープ・ゴッド
Happy Times making wine
In my garage
うちのガレージでワインを作った 幸福な思い出
Country shade amd lemonade
静かな木陰で飲んだレモネード
Guess I'm slowing down
何だかこころのネジが緩んでいくようだ
It's a turned back world
そんな世界に僕は連れ戻される
With a local girl in a smaller town
小さな町と近所の女の子たち
Open cars and clearer stars
オープンカーと澄んだ星空
That's what I've lacked
僕はそれらを長く失っていた
But fantasy world and Disney girls
でも、おとぎ話とディズニー・ガール
I'm coming back
そんな世界に帰っていこう
*ブルース・ジョンストンはブライアン・ウィルソンがツアーに出るのを拒否した時、代役としてビーチ・ボーイズに参加したらしい。
この曲は初めビーチボーイズのアルバム「サーフス・アップ」に収録されたとのこと。
ジョンストンはその後出した自分のソロ・アルバム「ゴーイング・パブリック」(1977)に、この曲を再録した。それがこのヴァージョン。
実にストレートにアメリカの夢とノスタルジーを歌っていますね。
■五時のホイッスル:Five O'Clock Whistle
album:Jump For Joy /Duke Ellington and his orchestra Featuring Ivie Anderson
春樹氏はこのアイヴィー・アンダーソンという歌手を筆を尽くして絶賛している。エリントン楽団の演奏も。
正直私は良く分かりません。
この良さが分かる春樹氏を凄いなあ、と思います。
■よそには行かないで:Don't Go To Stranger
album: Both Sides Now/ Joni Mitchell
ジョニ・ミッチェルほど、ジャズミュージシャンに評価される、ポップス系のシンガー、ソングライターはいません。
それにしてもこのジャケットは素敵ですね。↓
■ステート・トゥルーパー:State Trooper
album: Nebraska / Bruce Springsteen
■バン・バン :Bang Bang
ソニー・ボノ:作詞作曲 (1966)
album:She Shot Me Down / Frank Sinatra
和田氏が選んだのは(敢えて)フランク・シナトラのヴァージョンだが、
この曲、勿論最初にヒットさせたのは シェール。
続いてナンシー・シナトラ。
何故シナトラ・ヴァージョンを選ぶのかは本を読んでください。
タランティーノ監督の映画「キル・ビル」の冒頭で使われたナンシー・シナトラのヴァ―ジョンをどうしても聴きたいので、それをアップします。
『私は五歳 彼は六歳
二人は木の枝の馬で遊んだ
彼は黒い服 私は白い服
彼はいつも勝つ方だった
バン・バン 彼は私を撃った
バン・バン 私は地面に倒れた
バン・バン あのひどい音
バン・バン あの子はわたしを撃ち殺した
季節は移り 時は流れ
大人になって 私は彼をあなたと呼んだ
彼はいつも笑いながら言う
よく遊んだのを憶えているかい
バン・バン 僕は君を撃ったね
バン・バン 君は地面に倒れたね
バン・バン あのでかい音
バン・バン いつも君を撃ち倒していたね
音楽が始まり みんなが歌った
私たちのために 教会の鐘は鳴った
それも終わった 何故だか知らない
今も私はときどき泣いている
彼はさよならも言わなかった
嘘つくひまも作らなかった
バン・バン 彼は私を撃った
バン・バン 私は地面に倒れた』
*長い時の流れをこういう形で、一つの歌に結晶したソニー・ボノの才能に驚くばかりです。
■誰にも奪えない:They Can't Take That Away From Me
この最後の曲、無いのじゃないかと心配しましたがかろうじてありました。
動画ですが。
映画 ”Shall We Dance "のシーンのようです。
アイラ・ガーシュイン:詩、ジョージ・ガ―シュイン:曲
album:Fred Astaire and Ginger Rogers /George Gershwin
フレッド・アステア&ジンジャー・ロジャースは私より一世代上の方には、ノスタルジーをかきたてる存在なのでしょうね。
2人の踊りと歌が素晴らしかったことは、私にもわかります。
【まとめ】
終わりました。29曲
気に入った曲がありましたか?
わたしは全然知らなかった曲で村上さんに紹介されて好きになったのはブルース・ジョンストンの
Disney Girls です。何ともノスタルジックな曲でしたね。
最後まで付き合ってくださって、ありがとうございます。
★Special Thanks !★