ハンク・モブレー・ジャズの時代を生きたテナーサックス奏者の名盤8枚を聴く!
このところ、聴く音楽が少し甘めだったので、ハード・バップを聴こう!と思って、CDプレイヤーに差し込んだのがこれでした。
そう、ハンク・モブレーです。(モブレイ、モブリーとも表記されます)
Hank Mobley( 1930年7月7日 – 1986年5月30日)55歳没
モブレーのBLUENOTEでのデビュー・アルバムです。(1955年)
ハンク・モブレーというテナー奏者、何となく茫洋とした感じがあります。
「芋テナー」などと呼ばれていたことも思い出します。
しかし、この時代になって思い返してみると、逆に「あの時代を代表するようなテナーだった」という気がします。懐かしさを感じます。
アメリカのジャズ評論家レナード・フェザーが「テナー・サックスのミドル級チャンピオン」と呼んだという昔話も思い出します。
ヘビー級ではないのですね。ヘビー級はソニー・ロリンズでしょう。
(レナード・フェザーは「ヘビー級はジョン・コルトレーン」と言ったらしいですが)
Contents
Hank Mobley Quartet
このアルバムからまず1曲聴きましょう。
●〈Just Coolin’〉
このアルバムのメンバーですが
Hank Mobley ハンク・モブレー:テナーサックス
Horace Silver ホレス・シルバー:ピアノ
Doug Watkins ダグ・ワトキンス:ベース
Art Blakey アート・ブレイキー:ドラムス です。
録音エンジニアは勿論ルディ・ヴァン・ゲルダー です。
このゆったり感、どうですか?
このアルバム6曲入っているのですが、うち5曲がモブレーのオリジナルです。
(スタンダードは〈Love For Sale〉の1曲のみ)
そうです!モブレーは天性のメロディメイカーだったのです。
曲を作る才能が半端ではなかったことが分かりますが、それはソロでも同様です。
ソロ・フレーズが曲なのです(変な書き方?ーー言いたいのは作曲するようにソロを吹いていたということです)
とにかくソロでもモブレーのサックスから出てくる音が常にメロディアスでした。
他の3人も素晴らしいです。シルバーのバップピアノ!。ブレイキー親分もこの時代らしいドラムでもう最高に盛り上げてます。ワトキンスのベースはハードバップに欠かせない存在でした。
ところで、このジャケットめちゃめちゃカッコよくないですか?
〈水平のテナーサックスのマウスピースの尖端から煙のようにメンバーの名前が立ち上っている〉ーー写真:フランシス・ウルフ、デザイン:リード・マイルスの仕事ですねぇ。
Soul Station
で、次のアルバムに行くのですが、一般的にはモブレーで一番有名なアルバム「ソウル・ステーション」です。(1960年)
このアルバムが有名なのは全6曲がどれも素晴らしい出来だからでしょうか。
ここでも4曲がモブレーの曲です。
こちらのメンバーは先程のアルバムと同じカルテット編成なのですが、
ピアノが Wynton Kelly ウィントン・ケリー
ベースが Paul Chambers ポールチェンバース に替わります。
●〈This I Dig Of You〉
さっきの演奏よりファンキーな感じになっているのは、まあ時代のせいでしょうが、ウィントン・ケリーのピアノのせいでもありますね。
●続けてもう1曲、これはスタンダード・ナンバー(アーヴィング・バーリンの曲)〈Remember〉
節回しがモブレー節ですね。
こうしてスタンダード曲を聴いても、いままでにかけた3曲がいかにスタンダード・ナンバーに劣らない魅力的なメロディをもつ曲だったが分かります。
モブレーのテナーの音色も渋くてかっこいいです。ミドル級チャンピオンと呼ばれたのが何となく分かります。
Roll Call
そろそろモブレーの1管ではなくトランペッターが入った2管編成、クインテットでの演奏も聴きましょう。
「ロール・コール」(1960年)
上のメンバーに入るトランペットはFreddie Hubbard フレディ・ハバードです。
●〈Take Your Pick〉(モブレーの曲です)
いやー、これぞハード・バップ・ジャズですね。
1管加わるだけでカッコよさの質が変わります。
トランペットが先発ソロを取るので、モブレーのサックスが入って来るところが「ジャズーー!」になります。
このアルバムからもっと聴きたいところですが、先を急ぎます。
Work Out
次は同じくクインテットの演奏ですが、トランペットが抜けてギターが入ります。 そのギターがグラント・グリーンなのです。(1961年)
メンバーを確認します。
Hank Mobley – tenor sax
Grant Green – guitar
Wynton Kelly – piano
Paul Chambers – bass
Philly Joe Jones – drums
グラント・グリーンが加わった他、ドラマーがブレイキー親分からフィリー・ジョー・ジョーンズに替わっています。
◯曲は敢えて〈Uh Huh〉「アー、ハー」を。
曲のアタマ、サックスとギターが掛け合いでその後ユニゾン。
トランペットも良かったですが、ギターとサックスはまた別の意味で相性がいいんですね。
ドラムがフィリー・ジョーになって雰囲気が変わります。
それを言葉で書くことはかなり難しいです。
◯ここで演奏されている〈The Best Things In Life Are Free〉のモブリーのソロの部分を譜面化して下さっている方がいますので、それをアップします。
譜面を目で追える方には面白いです。
グリーンのギター・ソロになるところで終わります。
なお、この曲のタイトルの意味は「人生で一番大切なものは自由であるではなくて、タダ(無償)である」という意味と思われます。
Dippin’
おまたせしました。
モブレーの大ヒットアルバム「ディッピン」です。(1965年)
このアルバムに納められた〈Recado Bossa Nova〉は余りにも有名です。
メンバーは
Lee Morgan– Trumpet
Hank Mobley- Tenor Sax
Harold Mabern, Jr.– Piano
Larry Ridley- Bass
Billy Higgins– Drums
ヒットするはずですね。ヒットする要素が揃っています。
このラテンナンバーはこの後多くのプレイヤーに繰り返し演奏されることになりました。
A Caddy For Daddy
そしてDippin’と同じ年に、同じくリー・モーガン等と組んでこのアルバムが出ました。
こちらもDippin’に負けないカッコよさです。
このメンバーも確認しておきましょう。
Hank Mobley -Tenor Saxophone
Curtis Fuller -Trombone
Lee Morgan-Trumpet
McCoy Tyner -Piano
Bob Cranshaw-Bass
Billy Higgins– Drums
注目はカーティス・フラーのトロンボーンが加わって3管になっていることと、ボブ・クランショウとビリー・ヒギンズのThe Sidewinder コンビのベース、ドラムになっていることでしょうか。
High Voltage
(1967年)Hank Mobleyーtenor saxophone
Jackie McLeanーalto saxophone
Blue Mitchell ーtrumpet
John Hicksーpiano
Bob Cranshawーbass
Billy Higginsーdrums
トランペットがブルー・ミッチェルになり、アルトサックスにジャッキー・マクリーンが入っているところが注目です。そしてジョン・ヒックスのピアノが新鮮味を出している演奏ではないでしょうか。
Reach Out !
さあ、紹介する最後のアルバムになります。
1968年録音の〈Reach Out!〉です。
このアルバムでは〈Goin’ Out My Head〉〈Reach Out I’ll Be There〉といった当時のヒット曲も取りあげているのですが、最後までモブレーらしくモブレー自作曲〈Up Over And Out〉にします。
Hank Mobley — tenor saxophone
Woody Shaw — trumpet, flugelhorn
LaMont Johnson — piano
George Benson — guitar
Bob Cranshaw — bass
Billy Higgins — drums
トランペットが「あの」ウッディ・ショウです。
そしてギターにジョージ・ベンソンが入っています。
ヒギンズのシンバルが小気味いいですね。(Dippin’以降のドラムは全てヒギンズです)
まとめ
・全8枚すべてBLUENOTE盤でまとめました。
・’50年代の録音で他にもいいものがあるのですが、省略しました。
こんなアルバムです。
(ちゃんとバラード演奏もしているのですが)
モブレーはJazzの時代、’50,’60年代が終わるとともにシーンから去ってゆきました。
時代を代表するテナーサックス奏者でした。
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