モダンジャズを作った男チャーリー・パーカーのどこが天才的だったのか?
チャーリー・パーカー
(Charlie Parker Jr, 、1920年8月29日 – 1955年3月12日、34歳没)
パーカーについては、いつか書きたいと思いながら書けないでいました。
このままだといつまで経っても書けないので、見切り発車で書きます。
Contents
ジャズの天才
ジャズの世界で「天才」と言われるプレイヤーは何人もいます。
私もこのブログで「天才」という言葉を何度か使いました。
憶えているのは、バド・パウエル、セロニアス・モンク、チャーリー・クリスチャン、トニー・ウィリアムス、クリフォード・ブラウンを天才と呼んだように思います。
*マイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーンのことを天才とは(普通)呼びません。
しかし本当に、本物の、間違いない「天才」はチャーリー・パーカーでしょう。
何故かって?
(ほぼ一人で)ビーバップ(→モダンジャズ)という音楽を作り上げ、ジャズに革命を起こしたからです。
パーカーの前と後ではジャズが全く変わったからです。
*「モダンジャズ」という呼称はビーバップ以降のジャズを指す、としています。
その演奏は今日、2018年に急にこんなサックス奏者が現れたとしても、「すごいサックス奏者が出てきた!」と騒がれるであろうと思わせるような演奏だと思います。
とにかくパーカーの演奏をまず聴きましょう。
このボックスセット(5枚セット)からピックアップします。
ちなみにこれ、パーカーを聴くには最適なセットです。
(1940-1948のスタジオ録音を集めたUK編集盤です)
Bluebird
1曲目はかの菊地成孔先生が好きな曲「ブルーバード」です。
Miles Davis(trumpet),Charlie Parker(alto sax),Duke Jordan(piano),Tommy Potter(bass),Max Roach(drums).
Donna Lee
続けて「ドナ・リー」を。
Miles Davis(trumpet),Charlie Parker(alto sax),Bud Powell(piano),Tommy Potter(bass),MaxRoach(drums).
■2曲聴きましたがいかがですか。
どこがそんなに凄いの?という方もあるのでしょうか。
それは、パーカー以降のサックス奏者がみんなパーカーのように吹いたので、今聴いたらその凄さが分からないからです。当たり前に聴こえてしまうのです。
*現代のテナーサックス奏者が全てコルトレーンの影響を(多かれ少なかれ)受けていることに少し事情が似ています。
◎この録音1947年、48年の録音です。70年前。
しかし、(音質を別にすれば)まるで昨日録れたように新しいことだけは分かって頂けるのではないでしょうか?
Out Of Nowhere
もう1曲、美しいバラード曲 Out Of Nowhere を聴きましょう。
Miles Davis(trumpet),Charlie Parker(alto sax),Duke Jordan(piano),Tommy Potter(bass),Max Roach(drums). recorded in 1947
どこが凄いのかを書くことはすごく難しいです。 パーカーのことは音楽、ジャズを知っている人ほど、その凄さを語っています。プロのミュージシャンほどパーカーの凄さが分かるということです。 ◎この本の最後にゲスト講師として濱瀬元彦という人が登場します。 菊池から「パーカーの次はコルトレーンですか」とふられて濱瀬氏が言うには「・・・いずれやらなきゃならないだろうね。ただ、コルトレーンもパーカーが分かればね、☆ジャズのイディオムの9割は全部パーカーです☆。それを世間がわかっていない」と発言しているのです。 *この言葉を少し言い換えれば、『モダンジャズにおけるインプロヴィゼーション(即興演奏)を学ぶ者は、今でもパーカーがやったことを学ぶことがベストだ』と読めます。 そしてこれから約10年を経て、その成果がついに本にまとめられました。これです。
いまでもこれほどの構成力を持って、魅力的なフレーズを高速で紡ぎ出せるプレイヤーは、めったにいるものではありません。
マイルスのヘタッピなソロが目立ってしまうことになりました^^。
多分音楽の楽理的説明が必要になると思います。
それは私には難しいので、パーカーのことを書いた本の紹介をすることで、それに替えたい思います。
パーカーを語る本
菊地成孔・東京大学のアルバート・アイラー
この人はベーシスト、作曲家であり、「ブルーノートと調性」という本も書いている人なのですが、ここ10年くらいパーカーの研究を行っていることを語っています。
具体的にはパーカーの演奏を600曲ほど採譜して分析(アナライズ)してるというのです。
すみません。こちらの本は私は読んでいません。
(*多分読んでも理解出来ない部分が多いと思います。ところがAmazonでこの本をレビューしてある十数人の人の文が結構スゴイです^^。)
いつかは読んでみたい本です。
プロ・ミュージシャンをここまでその演奏の分析に没頭させるパーカーが凄い!としか言いようがないです。
すごいジャズには理由がある
岡田暁生×フィリップ・ストレンジ
フィリップ・ストレンジはプロのピアニストです。
この本で1章を割いて、フィリップ・ストレンジがパーカーの音楽について解説しています。(「モダンジャズの父ーーチャーリー・パーカー」)
その説明は楽譜などを使いながらかなり専門的、楽理的なので、素人には難しいものです。
パーカーの音楽の天才的なところは次の3点です(と、フィリップ・ストレンジがまとめています)
1.ライン(旋律)を美しく彫琢しながら、つねにバランスをとって展開する、プロポーションの感覚。
2.何十小節も前から何十小節も先まで見通しながらアドリブをやる、桁外れの視野の広さ。
3.限られた音程やリズムの素材から、ありとあらゆるアイディアを引き出してくる無限の想像/創造力。
ーーー下線は筆者
私(筆者)は特に2.の「桁外れの視野の広さ」というところに感動しました。
普通ジャズ・ミュージシャンがアドリブをする時、その瞬間のプレイのことしか考えていないのが普通ではないでしょうか?
パーカーは何十小節も前にやったアドリブを憶えていて、それに対応したアドリブをやって、しかも何十小節先のアドリブの構成まですでに準備しているというのです!(前が上行フレーズだったから、今度は下行フレーズとか)
with Coleman Hawkins
二人(岡田とストレンジ)が最後にYou Tubeで聴いたと書いてある、コールマン・ホーキンズ(テナーサックスの父とも呼ばれる)とパーカーの共演動画を見ましょう。
( Ballade 1950)
(岡田)なるほど、ホーキンズにももちろん真似のできない味がありますが、スピード感はもうパーカーの敵ではないですね。どう頑張っても追いつけないような最高速度と馬力の違いがある。
鮮烈、強烈、圧巻としかいいようがないです。
●まず、コールマン・ホーキンズさすがにいいですね!
先輩を前にパーカーは煙草を手に態度がデカイですね。
何より演奏しているホーキーンズを見る目が生意気です。
しかし、それも天才の証とみるべきでしょうね。
一方パーカーの演奏を聴くホーキンズはどんな思いだったのでしょうか?
ともかく、パーカーのアドリブ自由自在です。しかも自由なだけではないというのです。
Just Friends
●この本にも出てくる 〈Parker With Strings〉から〈Just Friends〉を聴きたいと思います。
●この曲、筆者も好きなスタンダード曲です。With Strings ですからパーカーの録音の中では最も売れた言わば当時のイージーリスニングのようなアルバムなのです。
しかしパーカーの演奏自体はやっぱりスゴイです。アタマからアドリブで入りますしね。
■パーカーについて書かれた本は他にいくらでもありますが、次の1冊を紹介します。こちらは全く理論書ではありませんが面白い本でした。
■また私のサックスの先生は「勿論」この本を持ってあります。「omni book」というだけで、この本のことを指します。
●あとはマイルス・デイヴィスの自伝にパーカーの生々しい人生が描かれています。
パーカーの有名な演奏
あとは、パーカーの有名な演奏をいくつか聴いてみたいと思います。
Confirmation
おそらく、現代においてパーカーの曲として一番演奏される機会が多いのはこの曲ではないでしょうか。
・
この演奏は20世紀の遺産と言っても過言ではないでしょう。
Au Privave
これも演奏されることが多い曲「オー・プリヴァーヴ」です。
渡辺貞夫も初期の録音でやっていました。
それだけ魅力のある曲なのですが、パーカーの演奏があったからこその現象と言えると思います。
Charlie Parker On Dial
Dial というレコード会社に録音されたパーカーの演奏も有名です。(1946、1947年)そのコンプリート盤がCD4枚で出ています。
Lover Man
中でもこの「ラヴァー・マン」が有名です。
この録音の時パーカーは麻薬と飲酒でボロボロで、ほとんど意識がないに等しい状態だったと言われています。そんな中でもこのような演奏が出来た!ということで非常に有名な曲です。なおトランペットはハワード・マギーです。
Cool Blues
このCool Blues はパーカーのソロ部分が採譜された映像がありましたので、それをアップします。もちろんパーカーはアドリブで吹いています。それを後の人が譜面に起こした訳です。
なお、ここでのピアノはエロール・ガーナーです。
Parker’s Mood
最後にバラード曲「パーカーズ・ムード」を聴きながら終わりたいと思います。
そして、この曲を1969年生まれのトランペッター、ロイ・ハーグローヴのグループが演奏している動画を、現代に生きるバード(パーカーのあだ名)の証拠として、添付します。
まとめ
◎パーカーの演奏の秘密に迫れれば良かったのですが、とても私にはムリなことです。それこそ紹介した濱瀬元彦氏の本にでもあたって頂くしかありません。
◎ただパーカーがいかに革命的であったか、天才的であったかを紹介したかったのですが、それにはジャズと言う音楽を統計的に、順を追って聴いていただかないことには分かりにくいことだったと思います。
何故ならパーカー以後のサックス奏者(否、サックス奏者に限らず)がみなパーカーのように演奏するため、今聴くとその革命性に気付きにくいのです。
◎しかし、パーカーの演奏が今聴いても(死後60年以上経っても)古びていないことに驚きます。そして今もなおプロ・ミュージシャン達を刺激し続ける存在はパーカー(とコルトレーンとマイルス・ディヴィス)以外にはいないでしょう。
*有名な曲、演奏、アルバムが他にも多くあるのですが、とても網羅的に触れることはできませんでした。
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