ジャズピアニスト佐山雅弘死去:ポンタボックスなどでの活躍を振り返り追悼の曲を聴く
キャッチ画像はhttp://news.livedoor.com/article/detail/15594881/より引用
ジャズ・ピアニスト佐山雅弘氏が一昨日(2018年11月14日)亡くなりました。
1953年11月26日 – 2018年11月14日 64歳でした。
PONTA BOX での演奏、M’s での演奏など数々の演奏が頭の中を駆け巡りますが、急なことだったのでまだ整理がつきません。
Contents
Hymn For Nobody ヒム・フォー・ノーボディ
佐山氏を追悼して聴く1曲を選ぶなら、この曲しか無いという気がします。
Hymnは賛美歌ですから、「誰のためでもない賛美歌」とでも訳すのでしょうか。
こんな美しい曲を作る人だったのです。
この曲は佐山が作った曲ですが、ご存知のように忌野清志郎が詩を書いて歌いました。忌野清志郎のボーカル入りも聴きましょう。
そしてこちらにも入っています。
最後のメッセージ
オフィシャル・ウエッブサイトに亡くなる日に(家人の方に託して)書かれた最後のメッセージがあります。
みなさま。
佐山雅弘よりこのお手紙がお手元に届く時、僕はこの世におりませんが、長きに亘ってのお付き合いにお礼を言いたくて家人に託しました。
加山雄三とタイガースが大好きな中学生。高度成長期大阪の衛星都市尼崎に親父が構えた小〜さな小売商を継ぐことに何の疑念も持たないごく普通(以下)の子供がジャズとの出会いで、楽しさこの上ない人生を送ってしまいました。
まことに人生は出会いであります。
「君の身体は君の食べたモノで出来ている」と言いますが、まったく同様に僕という者は僕が出会った人々で出来ているのだとしみじみ実感したことです。
その出会いを皆様にあらためて感謝しつつ、今後益々の良き日日を祈りながらお別れをします。
ありがとう、さようなら
2018年11月14日 佐山雅弘
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佐山雅弘オフィシャル・ウエッブサイトより引用
http://sayamamasahiro.com/
本当に音楽と共にあった人なのですね。
それにしても、この最後のメッセージはすごいですね。
「ありがとう、さようなら」・・・
村上春樹が書いた佐山雅弘のこと
村上春樹の本「雑文集」の中に「ひたむきなピアニスト」という文があります。
佐山(M’s)のCD〈Floatin’ Time〉のライナーノートとして書かれたものです。
まだ国立音大の学生だった佐山が、20代の村上春樹が経営していたジャズバー「ピーター・キャット」で演奏したときの印象を書いています。
彼のことは不思議にはっきり覚えている。
ほかの若いミュージシャンがいかにも「ズージャやってます」みたいなアンニュイな、ワイルドな雰囲気を漂わせていたのに比べて、佐山くんにはそういうところがなかったからかもしれない。学究的というか、とにかく明けても暮れてもピアノのことばかり考えている、というところがあった。頭の中にはとりあえずコード進行のことしか入っていないみたいにも見えた。
ーーー村上春樹「雑文集」より引用
M’s での演奏
上に挙げたCDのM’sとは
Masahiro Sayama (piano)
Masatoshi Koi (bass)
Masahiko Osaka (drums)
というピアノトリオのことです。3人の名前のイニシャルがMであることで「マサちゃんず」と名付けられています。
このCDから「クレオパトラの夢」を聴きます。
本当はこの曲〈Cleopatra’s Dream~Anthony’s Scream>と続くのですが・・。
このアルバムではTake Five と Take The A Train を合体した〈Take Five A Trains〉という曲が演奏されたりして、遊び心あふれた楽しいアルバムになっています。
ポンタボックスでの演奏
ドラムスの村上”ポンタ”秀一の「ポンタボックス」のピアニスト、コンポーザーとして、佐山雅弘は長い間活躍しました。
それを動画などで振り返ってみたいと思います。
Sbatotto すばとっと
PONTA BOX 1993年 青山円形劇場でのライブ映像です。佐山もまだ40歳でした。 村上”ポンタ”秀一 Drum / 水野正敏 Bass / 佐山雅弘 Piano
ライブ・アット・モントルー
スイスのモントルー・ジャズフェスティバルに出演した時のライブ盤を聴きます。
モントルーに出て、ライブ盤まで出している日本人はこのポンタボックスと大西順子くらいではないでしょうか。
曲はウエィン・ショーターの曲「フットプリンツ」です。
*このジャケットの城塞の写真及びロゴはビル・エヴァンズのモントルー’68の
●このアルバムにも入っている曲で、人気がある「コンクリート」というのがあるのですが、このアルバムの演奏はアップされていませんので、のちのライブ動画(京都2000年)でその曲を聴きましょう。
こんなアルバム〈PONTA BOX meets YOSHIDA MINAKO〉も好きでした。
ソロ・ライブ
今年(2018年)8月のピアノ・ソロ・ライブがアップされていました。
1時間を超える長尺ですが最初のメニューを見るとスタンダードから自作曲、シャンソンなど充実した内容のライブのようです。
私もまだ最初をちょっと聴いただけですが、貴重な記録となりそうです。
アップされた方に感謝しながら、これから全てを聴きたいと思います。
アンコール曲〈Hymn To Freedom〉(自由への讃歌)まで聴きます。
R.I.P
まとめ
まとめとして気の利いたことでも書ければ良いのですが、今私が何を書いても空しいような気がします。
先程引用した村上春樹のライナーノートの続きの文をまた引用することで、まとめに替えさせて頂きます。
「ひたむきなピアニスト」
だからプロ・ミュージシャンとして彼の名前を耳にするようになったときにも(その頃は僕ももう専業作家になっていた)とくに驚かなかった。
まあ、出てきても不思議はないよなと思った。その演奏を聴いたときにもとくに驚かなかった。鋭い切れ込みのある、知的で構築的な演奏スタイルは、昔から変わることがない彼の持ち味だった。もちろん以前とは比べようがないくらいうまくなっているのだけど、そこにあるタッチや音のビジョンはだいたい同じだ。そしてそこにはやはり昔と同じひたむきさのようなものが、ひしひしと感じられた。
ーーー村上春樹:「Floatin’ Timeライナーノート」及び「雑文集」収録
●最後まで付き合ってくださってありがとうございました。