デューク・エリントン:ジャズ史上最も有名であるべきなのにそれ程は聴かれない音楽家の名演、名盤を聴き直す
↑キャッチ画像は次のサイトより引用:http://100swingmusic.com/1920s/duke-ellington/
デューク・エリントン
Edward Kennedy “Duke” Ellington(1899年4月29日 – 1974年5月24日)は、ワシントンDC出身のジャズの作曲家、ピアノ奏者、オーケストラリーダー。
エリントンほど有名でありながら、その音楽が聴かれていない音楽家は珍しいのではないでしょうか?
ジャズは好きだけどエリントンは苦手という人が結構いるようです。
そもそも現代ではビッグバンド・ジャズが人気がありません。(エリントンは自らのバンドをオーケストラと呼ぶことにこだわっていたようです)
いや、そう書くと多少語弊があるでしょうか。
ブラスバンド出身者とか大学のビッグバンドに居た人は、大きな編成のバンドを好きかもしれません。
ところがそういう人でも「好きなバンドは?」と聞かれたら、答えはカウント・ベイシー楽団であったり、そうでなかったらベニー・グッドマン楽団、グレン・ミラー楽団だったりするのです。
書いている私もエリントンの音楽をたっぷり聴いているという訳ではありません。
3.2のエリントン楽団による「サテン・ドール」だけでもお聴きください。
Contents
エリントンを別のミュージシャンの言葉や音楽で知る
デューク・エリントン、不思議な人です。
黒人ミュージシャンの間で最も尊敬されている人です。
●マイルス・デイヴィスの自伝を読むと、
(記憶で書きますが)「黒人ジャズメンはみんなエリントンに感謝すべきだ。
毎朝起きたらエリントンに感謝の祈りを捧げるべきだ」と語っていました。
冗談で言っているのではありませんよ。
1974年5月にエリントンが亡くなった時、マイルスは1ヶ月も立たないうちに〈He loved him madly〉という曲を作り録音しました。
*このタイトルはエリントンの曲〈Love you madly〉から来たと思われます。
〈Get Up With It〉というアルバムの1曲目です。
32分という長尺の「追悼曲」なので音源をアップすることは止めておきます。
●またスティービー・ワンダーのヒット曲に〈Sir Duke〉というのがありますが、これも勿論エリントンのことを歌っています。
これは聴きましょう。
↑黒人音楽のヒストリーを繋げて、何となくエリントンの偉大さを納得させるような秀逸な動画ですね。
スティービーの音楽をまとめて聴くなら、これですね↓
●何故これほどまでに尊敬されるかを考えてみると、
1899年に生まれた黒人が人種差別もまだ激しかった時代に音楽家として、自己のオーケストラを率いて、
*黒人の音楽であったジャズを洗練された音楽として世界に認知させた。 *黒人の地位向上に計り知れない貢献をした。の2点が大きいと思います。
★1969年にはその功績が認められ、ニクソン大統領(ウォーターゲート事件が祟って悪評高いですが、それほど悪い大統領だったとは思いません)からアメリカ自由勲章が授けられています。
また、フランス政府からもレジオン・ドヌール勲章を授けられています。こんな黒人ジャズマンは他にはいません。
●それと、やはりエリントンの音楽自体が後に与えた影響の大きさもあるでしょう。
エリントンの名言として下の言葉が有名です。
「音楽には二種類しかない。善い音楽と悪い音楽の二種類だ」
この言葉からはエリントンがジャズという音楽にこだわっていないこともうかがえるのです。
マイルスの言葉などからも分かるように、エリントンという存在が無かったら20世紀のジャズ/音楽 が違ったものになったことは間違いないでしょう。
エリントン&ビリー・ストレイホーンの音楽について
初めにエリントンの音楽について2つのことを書いておきたいと思います。
1.エリントンの音楽は勿論彼自身のオーケストラで演奏されることが多いのですが、それとは別にピアニストとして、小さな編成のバンドで演奏されているものもあります。
ーーこちらのピアニストとしての仕事も後で紹介します。
2.エリントン楽団の演奏する曲はほとんどがオリジナル曲で、それらはエリントン・ナンバーと呼ばれます。
それらの曲の作曲者はエリントンの名前が書かれていることも多いのですが、ビリー・ストレイホーンという人の存在を忘れてはいけません。
エリントン~ストレイホーンの共作と表記されている曲も多いのですが、どこまでがエリントンの曲でどこからがストレイホーンの曲か判然としません。
(*これは個人的な意見です)
私は何もエリントンの作曲力を貶めるつもりはありません。ただストレイホーンが果たした役割が大きかったことを言いたいだけです。
1915年生まれのピアニスト、ビリー・ストレイホーンも不思議な人です。
〈Lush Life〉〈Satin Doll〉などストレーホーンが作った曲を聴くと黒人離れした(?)その感覚のモダンなこと、上品さに驚きを感じます。一体どのような音楽教育を受けたのでしょうか?。
*ちょっと話が逸れますが、エリントンはバイ・セクシャルであったことは有名です。そしてストレイホーンはエリントンとそういう関係だったそうです。
エリントン楽団の音楽
さあ、だいぶゴタクを並べましたのでエリントンの音楽を聴きましょう。
A列車で行こう
まず Take The A Train を動画で。
*エリントンによるストレイホーンの紹介から始まる’64年のバージョンです。
サテン・ドール
次は Satin Doll です。
この動画はキャプションが無いので何年物か分からないのですが、上の動画とそれほど離れてはいない時期と思われます。
エリントン楽団の演奏はそれこそ山ほどあります。 幸い(?)私もそう多くは持っていませんので持っている中から数枚を紹介させてもらいます。 エリントン・ナンバーをズラッと並べて、聴きやすいアルバムとして有名なのはその名も<The Popular Duke Ellington>というものです。 収録曲 このアルバム(2枚組)からは〈 Diminuendo and Crescendo in Blue〉を聴くしかありません。ポール・ゴンザルヴェス(テナーサックス)の伝説の27コーラス・ソロがあるからです。 エリントン・オーケストラが演奏する有名曲は、まだまだたくさんあるのですが、とても紹介しきれないので、これくらいにしておきます。 エリントン楽団にはいくつかの「組曲」(suite)と題されたアルバムがあります。 ・極東組曲 (The Far East Suite) ・ラテン・アメリカ組曲 ・ニューオリンズ組曲 ・女王組曲 などです。 それぞれ異なるコンセプトのアルバムですのでひとまとめには語れないのですが、これは果たしてジャズか? そもそも何故このようなコンセプト・アルバムを作るのか?どんな聞き手を想定して作っているのか?などの疑問もあるのですが・・・ 極東組曲から1曲 〈Isfahan〉を聴きます。 「イスファハン」というタイトルはもちろんイランの都市名なのですが、言葉の響きが刺激的です。 この曲、後のミュージシャンによる優れたカバー演奏があります。 いかがですか?こういう曲(エキゾ感溢れる曲)は菊地成孔が最も得意とするところです。(ちょっとエロ過ぎ?) エリントン・オーケストラを離れて、ピアニストとして残したアルバムも数多くあります。 ソロ・アルバムからエリントン楽団のメンバーとのコンボ作品、他のプレイヤーとの共演など色々あります。 その中からいくつかを紹介したいと思います。 エリントン楽団のスタープレイヤーだったアルトサックスのジョニー・ホッジスを、オーケストラ演奏では紹介できなかったので、ここでエリントンを含むクインテット(五重奏団)のアルバムで紹介します。 ブルース曲ばかりをやっています。 エリントンのピアノの和声を聴くと、ただの古いタイプのピアニストではなかったことが良く分かります。 「バック・トゥ・バック」の兄弟盤のような「サイド・バイ・サイド」もまたスィートなホッジスのアルトとエリントンのスウィングするピアノが聴ける名盤です。 〈 Just Squeeze Me〉を聴きます。 このアルバムの半分ではエリントニアンではないテナーサックス奏者、ベン・ウエブスターとの共演も聴くことができます。(ビリー・ストレイホーンのピアノも) エリントンの番外録音として最高なのは〈Money Jungle〉ではないでしょうか? この3人が共演するとどんなことになるのか? 〈Backward Country Boy Blues〉 このアルバムではエリントンバンドからの選抜メンバーを引連れて、コールマン・ホーキンスと一期一会の共演を果たしています。 曲は〈Ray’s Charles Place〉 duke ellington(piano), coleman hawkins(tenor sax), johnny hodges(alto sax), aaron bell(bass), lawrence brown(trombone),harry carney(baritone sax), ray nance(cornet), sam woodyards(drums) 最後の紹介アルバムです。 曲は〈Angelica〉を選びます。(エリントン作曲) この曲はもうコルトレーン世界そのものでした。
黒人のバンドとしては、非常に洗練された音楽/演奏をやっていますね。
エリントン御大の存在感もスゴイです。Duke というあだ名に恥じない堂々とした存在感。エリントンのピアノはバンドに負けないように力強いですね。
なんかねぇ、カッコいいし、すごいゴージャス感もあって、改めて感動します!
それとやはり、ホーンアンサンブルの気持ちよさを久しぶりに思い出しました。(これはビッグバンドでないと味わえません)
エリントン楽団を聴くCD
ですから絞り込むしかありません。ザ・ポピュラー・デューク・エリントン
アット・ニューポート (1956)
4:05~10:10の6分超え、脅威の27コーラス・ロングソロです。
6分あたりからの会場のザワザワと盛り上がる雰囲気が捉えられています。
エリントンの組曲: 極東組曲→菊地成孔
有名なところでは、ジョー・ヘンダーソンによるもの、ジョニー・グリフィンによるもの等があるのですが、菊地成孔のDUB Quintet が素晴らしい演奏をしています。他に機会もないでしょうから、ここでその動画もアップします。
それにしても、やはり原曲の素晴らしさですね。(エリントン=ストレイホーン共作表記が多いようです)
ピアニストとしてのエリントンのアルバム
ジョニー・ホッジスとの「バック・トゥ・バック」
一番有名な「セントルイス・ブルース」を聴きましょう。
トランペットはハリー”スィーツ”エディソン。
サイド・バイ・サイド
マネー・ジャングル
何しろチャーリー・ミンガスのベース、マックス・ローチのドラムスという戦闘的強力メンバーでのトリオなのです。
聴いて見ましょう。
エリントンのピアノ、前衛的と言える部分もあります。
エリントン・ミーツ・コールマン・ホーキンス
デューク・エリントン & ジョン・コルトレーン
コルトレーン・カルテット(―マッコイ・タイナー)+エリントン というアルバムです。
そちらの方がエリントン色が出ているかと思いますが、このエリントンの曲のコルトレーンの演奏が好きなので、それを優先しました。 まとめ