ジェフ・ダイヤー著、村上春樹訳「バット・ビューティフル」はジャズについて書かれた優れた本

ジェフ・ダイヤー著、村上春樹訳「バット・ビューティフル」について書いています。
その文章のある種の難解さゆえに、途中で放りだした人も多いのではないでしょうか?
私もそうでした。 しかし思いなおして、読んでみると実に良く書かれた本であることが分かりました。
1回めの記事でこの本の読み方、読む順番について書きました。
今回は、ジェフ・ダイヤーによる「著者あとがき」について書きます。
著者あとがき
「伝統、影響、そして革新」という副題がつけられた長い著者によるあとがきがあります。
実に44ページにわたる「あとがき」です。
この文章は、
1)一つの立派なジャズ論であり
2)ジャズ100年の歴史書であり
3)お薦めジャズ作品を紹介する
文章になっています。
よってこの長い「あとがき」を読むだけでも、この本を買った価値があるというものです。
ザ・リーダーズ
あと、これは個人的なことなのですが、
私のジャズの好みと非常に共通するところが多く、嬉しかったのです。
例えばレスター・ボウイが率いる The Leaders
をきちんと褒めてある文章に初めて出会いました。
1980年代の後半における最も優れたジャズは、(中略)それを具現化したものとして「ザ・リーダーズ」に勝るものは一つもないだろう。これはレスター・ボウイ、アーサー・ブライス、チコ・フリーマン、ドン・モイエ、カーク・ライトジー、セシル・マクビーをフィーチャーした、共同体的バンドである。
もしジャズの歴史全体が一つの玉に丸められ、それがレコードに押し延ばされたとしたら、そのサウンドは「ザ・リーダーズ」が目指しているサウンドにとても良く似たものになるだろう。
私はThe Leaders を激褒めする文章をAmazonレビューに書きましたが、完全に無視されました。これ↓を見てください。そもそも後にも先にも、このアルバムにレビューを書いているのは私一人です。
だからこのダイヤーの「あとがき」のThe Leaders 賞賛文には「おーーーっ」と驚きとともに喜んだものです。
レスター・ボウイもそうだが、ほとんどのジャズ評論家が無視して語らないデヴィッド・マㇾーやアーサー・ブライスにきちんと言及している。
ジョン・コルトレーン
そしてコルトレーンの評価の仕方、コルトレーンのどの時代の作品が真に価値があるかという評価の仕方の点でも、すごく納得できるものでした。
また引用になります。
1960年代初期から1967年の死に至るまで、コルトレーンは自らの音楽をぐいぐいと前に押し出していると同時に、それによって激しく鞭打たれているかのようである。
彼は完成したビバップ・プレイヤーでありながら、既存の檻から自由になろうと、休みなく激しく務めてきた。それが結成されていた5年間、コルトレ-ン、エルヴィン・ジョーンズ、ジミー・ギャリソン、マッコイ・タイナーのクラシックカルテットーー類を見ない四人の人間のあいだの最も優れて創造的な関係ーーは、他のどのような芸術形式においても稀にしか見受けられない表現能力の高みまで、ジャズを引っ張り上げた。
(*下線:管理人)
1960年以降のImpulse レコードでのコルトレーンをこのように、最大限の賛辞で評価する文章は意外に無いのです。 単体で「バラード」とかのアルバムを褒める文章は多いのですが。
またベスト100とかのセレクトにもこのクラシック・カルテットはほとんど入ってないのが現実です。(入っているとしたら「至上の愛」くらいです)
以下はダイヤー氏お勧めのアルバムです。
◎ダイヤーによる聴くべきコルトレーンのアルバム。
「すべてのクラシック・カルテットによるアルバムが聴くべきアルバムなのだが、特に」ということで、以下3枚がダイヤー氏によって紹介されています。この選択も非常に納得できるものです。
それではダイヤー氏おすすめの〈Sun Ship〉 を聴いてみましょう。
全5曲ですが組曲のようになっています。
〈Sun Ship-Dealy Beloved-Amen-Attaining-Ascent〉 Recorded: Aug. 1965
(*これを最初から最後まで聴いた人には商品を差し上げます(ウソです))
ダイヤーによる2つのグループの推薦盤を紹介しました。
その他では、JAZZの歴史をひもときながら、独自のJAZZ論を展開しています。それは、読み応えがあり納得のゆく文章です。
以上、この本の「著者あとがき」について書きました。
ーーーー
訳者あとがき(村上春樹)
著者あとがき(ジェフ・ダイヤー)
を読まれた後は、落ち着いて、本文に移れると思います。
●読みにくい文章を最後まで読んでくださってありがとうございます。