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日本が世界に誇るジャズ・ピアニスト大西順子の「バロック」を聴く!

 
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団塊世代ど真ん中です。 定年退職してからアルト・サックスを始めました。 プロのジャズサックス奏者に習っています。 (高校時代にブラスバンドでしたけど当時は自分の楽器を持っていませんでしたので、それっきりになりました) 主にジャズについて自由に書いています。 独断偏見お許しください。

大西順子が2010年に出したアルバム

バロック

がジャズ・アルバムとして実に良く出来たものなのですが、なかなか評価されていないようですので、
このアルバムがいかに素晴らしいものであるかを聴き解いてみたいと思います。

*大西は2012年に引退宣言をして事実上引退しました。(結果この「バロック」が引退アルバムということになりました)

このあたりのことは小澤征爾*村上春樹の本に詳しいので、良かったらこちらの記事をご覧ください。⇒「小澤征爾さんと、音楽について話をする 」村上春樹、は絶対文庫本を読むべき(大西順子のための追加章がある)

出典:大西順子公式HP
http://junkoonishi.runinc.jp/

なお、大西はその後2015年に一応復帰しています。

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アルバム「バロック」Baroque

収録曲

 

  1. トゥッティ
  2. ザ・マザーズ(ホエア・ジョニー・イズ)
  3. ザ・スルペニ・オペラ
  4. スターダスト (無伴奏ソロ・ピアノ曲)
  5. メディテーションズ・フォー・ア・ペア・オブ・ワイアー・カッターズ
  6. フラミンゴ
  7. 52丁目のテーマ
  8. メモリーズ・オブ・ユー (無伴奏ソロ・ピアノ曲)
 
 
 
 

2010年にニューヨークで録音されていますが、メンバーは以下のようなものです。

メンバー

基本は大西順子のピアノ・トリオに3管編成のクインテットという形態です。

メンバー
ピアノ:大西順子
ベース:レジナルド・ヴィール   Reginald Veal
    ロドニー・ウィテカー       Rodney Whitaker
ドラムス:ハーリン・ライリー        Herlin Riley
トランペット:ニコラス・ペイトン         Nicholas Payton
サックス&フルート:ジェイムス・カーター     James Carter
トロンボーン:ワイクリフ・ゴードン                 Wycliffe Gordon
(1曲目のみcongaが入る)

レジナルド・ヴィールとハーリン・ライリーは以前から大西順子トリオとして演っている周知のベース&ドラムスですね。

 

このメンバーがいかに凄いものであるかは、新しいジャズを聴いてある方はピンと来ると思います。これだけのメンバーを揃えることができるのも大西順子の力です。

・メンバー表にあるようにベースが2本入っていますが、ベース2本で演奏されるのは、1.3.5.7の4曲です。

・曲目にある通り4.と8.はピアノソロです。

このアルバムが何故「バロック」と名付けられているのか?も聞く前の疑問でした。収録曲にバロック音楽があるわけではありません。

●(トリビア)このアルバムのジャケット写真は蜷川実花が撮ったものだそうです。

●このアルバムのハイライトは(2つのピアノソロを除けば)
次の2曲だと思います。
 3. ザ・スルペニ・オペラ
 7. 52丁目のテーマ

それを聴きます。

追記:音源のリンクは全て消されました。
   CDを買って聴いて下さい~^^ 

ザ・スルペニ・オペラ The Threepenny Opera

左右のスピーカーから出てくる2本のウッドベースで始まるこの曲は、大きく3つのパートに分かれているようです。
1.ブルース・パート(ダブルベースのイントロを含む)
2.テーマ・パート(3管を中心に)
3.ジャッキー・バイアードが残したスコアを基にしたアドリブ・パート

●まずこの曲に対する??から
1.曲のタイトル、日本語では「ザ・スルペニ・オペラ」英語では〈The Threepenny Opera 〉となっているのは何故なのか?
また英語タイトルは「三文オペラ」と呼ばれる曲が存在するが、それとの関係は? 作曲は大西順子となっているが?

2.テーマのメロディは確かに聴いたことがあるが、誰の何という曲かどうしても思い出せない。(ミンガスの曲という気がしてならない)
*どちらの疑問も日本盤であれば解説に書いてあるかもしれないことではあるのですが。

というような疑問があるのですが、とにかく演奏が素晴らしい。
特に3つの管(ペイトン、カーター、ゴードン)がさすが大西が選んだプレイヤーだと思わせる演奏。
特にジェームズ・カーターのバス・クラリネットなどが・・・もうミンガスやってます。エリック・ドルフィーやってます。

このアルバム全体の印象を書いてしまいますが、
(ニューオリンズジャズ)→デューク・エリントン楽団→チャールズ・ミンガスのバンド
を思い起こさせるものです。アルバム全体がジャズという音楽を俯瞰するような力作です。大西のピアノについては次の曲で。

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52丁目のテーマ The Street Beat/ 52nd Street Theme

まず、もうね、素晴らしいジャズだ!としか言えません。 最初のピアノ&テーマ合奏部分からその世界に引き込まれます。
ニコラス・ペイトンのtpソロの輝かしいこと!
ジェームズ・カーターのtsソロのカッコいいこと!
そして大西のピアノは、今これだけのジャズ・ピアノが弾ける人が世界にどれだけいるだろう?と思う。
女性ピアニストととかのくくりは関係ないピアノです。サー・チャールズ・トンプソン、エリントン、カウント・ベイシー、エロール・ガーナー、テディ・ウィルソンなどのかってのピアノの巨匠たちが大西のピアノの中に息づいている。

ピアノ・ソロ       Memories Of You, Stardust

 


このピアノ・ソロ。簡単に出来る演奏ではありません。
大西順子がどれほど修練を積んだピアニストか分かります。
先程ジャッキー・バイアードの名前が出ましたが、この曲、ジャッキー・バイアードとローランド・カーク(二人共チャールズ・ミンガス門下生)のデュオで演奏されるバージョンがとても好きなのですが、大西の演奏もこの上の曲で書いたように先人たちの遺産を引き継いだ演奏と感じます。
大げさに言えばジャズの歴史を一人で総括しているような壮大さを感じます。
そして、そのリズム感。彼女の体にはジャズのリズムが根深く染み込んでいるように感じます。絶対にぶれないリズムをソロでもアンサンブルでも奏でています。
もう1曲のピアノ・ソロ〈Stardust〉も同様です。

【参考】Memories Of You – Jaki Byard / Roland Kirk

まとめ

初めに、何故「バロック」というタイトルをつけたのか?という質問を呈しましたが、このアルバム全体を聴けば何となく分かったような気がします。

実にバロック的な意欲作でした。

「ん?意味分からん」と言われそうですが、芸術の世界では「バロック的である」という言い方はかなりの褒め言葉ではないでしょうか?

自ら「バロック」と名付けたのは自信の現れでしょう。
軽々しくバロックは名乗れないことだと思います。

この日本が世界に誇るピアニストの意欲作を、世界が、日本が、ちゃんと評価して欲しいものです。

(追記)今YouTubeで大西順子、バロックと検索するとこのエピソード動画があるのみです。

 

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