All The Things You Are というジャズのスタンダードの名曲を一挙に33組のヴァージョンで聴きまくる!【改訂版】

All The Things You Are 「オール・ザ・シングス・ユー・アー」という曲
1939年にジェローム・カーン(曲)オスカー・ハマースタインⅡ(詩)によって作られた、例によってミュージカルのための歌曲(ラブ・ソング)なのですが、曲が良くて、コード進行が面白いので、多くのジャズ・ミュージシャンに演奏されることになりました。(筆者も好きな曲です)
「そんなに聴けるか!」と言われそうです。適宜好みでお聴きください^^。
曲順はランダムです。
Contents
- 1 エラ・フィッツジェラルド
- 2 キース・ジャレット・トリオ
- 3 コールマン・ホーキンス
- 4 ジョニー・グリフィン
- 5 ブッカー・アーヴィン
- 6 パット・メセニー
- 7 スコット・ハミルトン
- 8 チェット・ベイカー
- 9 クリフォード・ブラウン
- 10 ビル・エヴァンス
- 11 バド・パウエル
- 12 セロニアス・モンク
- 13 シダー・ウォルトン
- 14 ハンプトン・ホーズ
- 15 マッコイ・タイナー
- 16 ブラッド・メルドー
- 17 チャーリー・パーカー
- 18 ディジー・ガレスピ―
- 19 デイブ・シルドクラウト
- 20 ハンク・モブレー&リー・モーガン
- 21 レニートリスターノ
- 22 アートペッパー&ウォーン・マーシュ
- 23 ポール・デスモンド&ジェリー・マリガン
- 24 リー・コニッツ W/マリガン&ベイカー
- 25 デイヴ・ブルーベック&アンソニー・ブラクストン、リー・コニッツ
- 26 渡辺香津美
- 27 ジミー・レイニー
- 28 タル・ファーロウ
- 29 デール・ブラニング&ビル・フリーゼル
- 30 グラント・グリーン
- 31 渡辺貞夫
- 32 フィル・ウッズ
- 33 ジャック・ジョーンズ
- 34 おわりに
エラ・フィッツジェラルド
まず聴くのはどれがいいか考えたのですが、1番目だけは歌詞のある(つまり歌手による)バージョンにします。(*後はすべてインスト演奏です)
歌うのはエラ・フィッツジェラルドです。
歌詞
You are the promised kiss of springtime
That makes the lonely winter seem long
You are the breathless hush of evening
That trembles on the brink of a lovely song
You are the angel glow that lights a star
The dearest things I know are what you are
Some day my happy arms will hold you
And some day I’ll know that moment divine
When all the things you are, are mine
この歌詞をずっと見てゆくと一番最後の
all the things you are, are mine
という所が一番言いたいこと、すなわちタイトルの意味なんですね。
(いつの日か)あなたの全てがわたしのもの・・・
キース・ジャレット・トリオ
この曲のメロディを愉しむ演奏としてキース・ジャレットのスタンダードトリオの日本でのライブ演奏動画を観ましょう。(1996年昭和女子大学人見記念講堂)
Keith Jarrett :piano
Gary peacock: bass
Jack Dejohnette: drums
このトリオの演奏は聴くと安心します^^
アルバムでは「スタンダード Vol.1」で演っています。
コールマン・ホーキンス
ホーキンスの有名ライブ盤(ジェリコ a.k.a ヴィレッジゲイト)で演奏されています。
この曲のテナー演奏のお手本になったような演奏です。何よりカッコいいですね!
Hawkins(ts), Tommy Flanagan(p), Major Holly(b), Ed Locke(ds)
ジョニー・グリフィン
ここでサックス演奏に行きたいです。 ジョニー・グリフィンに〈Blowing Session〉(1957)というアルバムがあります。 このアルバム、グリフィンの他にテナーにジョン・コルトレーンとハンク・モブレーを迎えてゴリゴリ吹いちゃうという正にブロウイング・セッションなのですが、ここでこの曲を演っています。聴きましょう!
● Lee Morgan: Trumpet
Johnny Griffin, Hank Mobley, John Coltrane: Tenor Saxophones
Wynton Kelly: Piano
Paul Chambers: Bass
Art Blakey: Drums
管のソロ順は グリフィン→コルトレーン→リー・モーガン(tp)→ハンク・モブレー ですね。
3人のテナー奏者の吹き方の違いが聴けるだけでも面白いです。
・ゴリゴリのストロングスタイルのグリフィン
・ノンビブラート、高音多用のコルトレーン
・一番普通のバップテナーのモブレー
ブッカー・アーヴィン
テナーサックスのブッカー・アーヴィンが1964年の〈The Songbook〉というアルバムで演っています。
特に名手トミー・フラナガンのピアノが聴けます。
アーヴィンは無駄な装飾音を使わないストレートな演奏が好感を持てます。
Booker Ervin – tenor saxophone
Tommy Flanagan – piano
Richard Davis – bass
Alan Dawson – drums
パット・メセニー
ギターと言えばメセニーの演奏を外せません。
特にこのデイヴ・ホランド、ロイ・ヘインズとのとのトリオ
GEFFEN盤〈Question and Answer〉での演奏はギター演奏の定番です。
Pat Metheny – guitar
Dave Holland – bass
Roy Haynes – drums
Recorded December, 1989
スコット・ハミルトン
スコット・ハミルトンが〈East Of The Sun〉というアルバムで演っていました。(1993年Concord盤)
ハミルトンは歌でいうヴァースの部分から吹き始めています。そのヴァース→本テーマ に移る所がかっこいいです。
*登場した時には単なるイミテーターのようだったスコット・ハミルトンがこの頃からぐっと良くなりました。
チェット・ベイカー
全体を見るとサックス奏者の演奏が多いので、ここにトランペットのチェット・ベイカーを入れたいと思います。チェットは何度かこの曲をやっているようですが、1953年24歳のチェットのラス・フリーマン(ピアノ)とのセッションが一番良いようです。
クリフォード・ブラウン
夭折の天才トランぺッター、クリフォード・ブラウンの演奏です。
輝かしいペットです。1953年パリでの録音。
キャプションは以下。(米仏の混合バンドですね)
Gigi Gryce – Clifford Brown Sextet
Clifford Brown (tp) Gigi Gryce (as) Henri Renaud (p) Jimmy Gourley (g) Pierre Michelot (b) Jean-Louis Viale (d) Paris, France, September 29, 1953
ビル・エヴァンス
しかし、エヴァンズはやはり凡百のピアニストとは違います。徐々にピアノの鬼と化して行くのが分かるのです。
またエヴァンズは下のアルバムでもこの曲を、こちらはトリオでやっています。
バド・パウエル
ピアニストで聴くならこの人を入れなくちゃという・・・バド・パウエル。
●バドは何回も演奏していますが、まず聴くのは中期’55年の録音です。
まだ、、充分に、、パウエルらしい演奏ですね。
Parcy Heath (bass)
Kenny Clarke (drums)
●パリに移ってからの録音もあります。(1961年)
これもまた魅力のある演奏です。パウエルがセロニアス・モンクに捧げたアルバム。
セロニアス・モンク
バドを聴いたらもう一人のピアノの天才、セロニアス・モンクのグループの演奏も!
サックスはもちろんチャーリー・ラウズです。
Thelonious Monk ( p ), Charlie Rouse (ts), Larry Gales (b), Ben Riley (d)
この1964年の”ITクラブ”での2枚組ライブアルバムは、モンクの有名曲を始めとしてスタンダードナンバーなど、聴きごたえのある秀逸ライブアルバムだと思います。
シダー・ウォルトン
シダーというピアニストは地味な印象がありますね。
たしかに渋いタイプのピアノだと思うのですが、よく聴けばまさにピアノの王道を行くステキな演奏をしていることに気づきます。
紹介するオランダのTimelessレーベルで、ロン・カーター、ジャック・ディジョネットのトリオで吹き込まれたAll The Things ~もそういう味わい深い演奏です。
*余談ですが村上春樹がこの↓著書の中でシダー・ウォルトンに最初の1章を割いています。
春樹氏はシダーを「強靭な文体を持ったマイナー・ポエト」と呼んでいます。文学者らしい上手い表現ですね。
ハンプトン・ホーズ
あとピアニストの演奏と言えば
そう、ホーズを忘れてはいけません。
スローで弾き始めて途中からスウィンギ―になるというホーズらしい、バッパーらしい演奏で気持ちいいです。
マッコイ・タイナー
マッコイがソロでやっています。
これが素晴らしいです。
マッコイ・タイナーも今年亡くなりましたね。 (2020年3月6日)
ブラッド・メルドー
ブラッド・メルドーが The Art of the Trio シリーズの第4集 ヴィレッジヴァンガードのライブでやっていますので、聴きましょう。
Piano: Brad Mehldau、Bass: Larry Grenadier、 Drums: Jorge Rossy
チャーリー・パーカー
有名盤〈Jazz At Massey Hall 〉にこの曲が入っています。
Charlie Parker(as) , Dizzy Gillespie(tp) , Bud Powell (p) , Charles Mingus(b) , Max Roach (dms) Recorded Live at the Massey Hall, Toronto, Canada on May 15, 1953
このメンツは一期一会ですね。みんなすごいです。
●Bird Of Paradiseという曲があるんですが、このイントロ、エンディングがall the things~と同じなので、まるでall the things~の変奏のように聞こえます。↓
ディジー・ガレスピ―
ガレスピ―バンド1945年の演奏でこの曲をやっているのですが、
聴きどころはずばりパーカーの演奏です。
Gillespie (tp); Charlie Parker (as); Clyde Hart (p); Remo Palmieri (g); Slam Stewart (b); Cozy Cole (d).
デイブ・シルドクラウト
幻のアルトサックス、 Dave Schildkrautです。
(こんな名前ですがアメリカ人です。1925年生まれ)
マイルスのWalkin’でアルトを吹いて印象的なソロを残しています。
死後たった1枚のリーダーアルバムが出たそうなのですが、その中にAll The Things ~が入っていました。
これがまたいいんですよ。
ハンク・モブレー&リー・モーガン
レニートリスターノ
アートペッパー&ウォーン・マーシュ
ポール・デスモンド&ジェリー・マリガン
リー・コニッツ W/マリガン&ベイカー
さっきのトリスターノでこの曲をやっていたリー・コニッツが G.マリガンとC.ベーカーをバックにやっているバージョンです。Liveです。
リー・コニッツも今年(2020年)亡くなりました。偉大なるスタイリストだったと言えるでしょう。
デイヴ・ブルーベック&アンソニー・ブラクストン、リー・コニッツ
このメンバー
Dave Brubeck:piano
Anthony Braxton : alto sax
Lee Konitz:alto sax
Jack Six: bass
Roy Haynes: drums
は面白いです。特に2アルトは珍しいですね。