「ラ・ラ・ランド」は音楽映画としては失敗作(面白くない、つまらない、不可解、観ていてイライラする)
↑キャッチ画像はiTunes Store より:https://arigato-ipod.com/2017/08/itunes-store-la-la-land-movie-release.html
テレビで「ラ・ラ・ランド」を見ました。
見終わって・・・・・
★★★☆☆ 星3つ
・音楽映画としては
★☆☆☆☆ ★1つ
●チャゼル監督って精神的変態だ!
だと思いました。
何故なら、
「映画(のテーマ)」と「映画で聞かれる音楽」が一致してなかったからです。
これは音楽映画としては致命的です。
見ていて、もやもや感が段々つのってきます。
先日亡くなった、素晴らしいジャズピアニストにして映画音楽作家ミシェル・ルグランのような人が関わったら、こんな映画には絶対ならないです!
・そもそもこの映画は何を言いたい、描きたかったのでしょうか?
・監督・製作者が意図したことは何なのでしょうか?
(*かなり複雑な意図があったと思われてなりません。私はcomplexという言葉が浮かんでなりませんでした。)
・私はジャズに拘っているわけではありません。(別にジャズ映画でなくとも全く構わないのです)
ジャズに拘っているのは製作側です。モンクやパーカーなどの有名ジャズメンの名前が頻出することで、ジャズに拘った映画であることを製作者側が観客に常に意識させるのです。
にもかかわらず、演奏される音楽がジャズではないことに、観る側はフラストレーションがたまるという全く妙な作り方になっています。
*以下私が気に入らない点を書きます。
(ラブ・ロマンス映画としては、冬に始まり、春、夏、そして5年後の冬という展開など、なかなかいい感じで好きです)
今までに見た、いい音楽映画
比較対照のために「いい音楽映画」のことをまず書きます。
何も古い映画「グレン・ミラー物語」「ベニー・グッドマン物語」とかを持ち出すつもりはありません。
次の5本を挙げることで充分でしょう。
1.マンボ・キングス
2.ラ・バンバ
3.ブラス!
4.モ・ベター・ブルース
5.アマデウス
どの映画もその映画のストーリーに相応しい音楽を、たっぷり聞かせてくれました。
音楽と映画がぴったりと合っていました。
●4.のスパイク・リーが監督した「モ・ベター・ブルース」がラ・ラ・ラと同じジャズがテーマでしたが、吹き替えで本物のジャズメンを使ってホンモノのJazzを聴かせてくれました。そしてそのジャズ演奏シーンが物語にとって最も重要なシーンとなっていました。
●ラテン音楽がテーマだった1.の音楽シーンも見事でした。
そして愛(キューバに残した恋人、アメリカで結婚した女性との愛、そして兄弟愛)が音楽と一体となりながら見事に描かれていました。
愛の映画として ★★★★★
音楽映画として ★★★★★
●イギリスの炭鉱のブラスバンドを描いた「Brassed Off! 」も最後のロイアル・アルバート・ホールでの演奏、行進で演奏する「威風堂々」、指揮者役のピーター・ポステルウェイツの演技・・・涙がジワッーと湧いてくる作り方でした。そしてあくまでも音楽が主役でした。
これも
人間ドラマとして ★★★★★
音楽映画として ★★★★★ でした。
●青春ロックンロール映画「ラ・バンバ」だって同様でした。
●「アマデウス」は言うに及ばずです。
「ラ・ラ・ランド」で気になった点
1.セブが語る夢が
・ジャズ・ピアニストとして成功することと
・ジャズ・クラブを持つこと(ジャズ・クラブのオーナーになること)
の2つに分裂している。
この2つは若い時の夢としては異なる目標ですから、どちらが本気なのか、はっきりして欲しかった。気になって仕方なかったです。
(勿論、実際のジャズ・ミュージシャンで成功した後に自らの店を持った例はいくらでもあります。ーーシェリー・マン、アーマッド・ジャマルなど)
2.セブはジャズ・クレイジーという設定になっている。
それなのに、ピアノを弾くとジャズではない。
マイルスだモンクだパーカーだと言いながら、そのような演奏が全く出てこない。
*ハードバップ以前のミュージシャンの名前ばかりなのも少し気になりました。
そのくせケニーGはバカにしてた!。(ケニーGは立派なジャズ・ミュージシャンです)
ピアノを弾くシーンがいくつかあったが、それはせいぜいポピュラー・ピアノでした。少しクラシックタッチもありました。とにかくJazzではない。
そのピアノからジャズの和音やフレーズが響くことは一度もありませんでした。
いくら気に入らない(望む場所ではない)所やバンドでの演奏という設定でも、ジャズ・ピアニストならあんな弾き方はしません。リチャード・クレイダーマンのマネごと程度にしか聞こえませんでした。
・見終わって思うのは、好きなジャズが弾けない状況という設定にすることで、ジャズを演奏するシーンを避けていたように感じました。
実は観客を焦らしていて、どこかで本当のジャズピアノを弾いて、カタルシスがあるのかとも淡い期待を持ったのですが、終わりは全く逆でした。
最後、ミアとその主人が訪れたセブの店でピアノを弾いていたのは別人でした。
そのジャズもほんのおさわり程度でした。
そして、クライマックスでセブがソロで弾くのは、またもやロマンティックな(?)ポピュラーピアノでした。
セブはどう頑張ってもジャズ・ピアニストなんかにはなれない人だったのが明らかでした。
だからジャズを目指す(それがプレイヤーでもクラブ・オーナーであっても)夢をもつ人物設定と映画に流れる音楽が全く合っていなかったと思うのです。
まとめ
●ジャズファンには全く納得ゆかない映画だったと思います。
・ラブ・ストーリー部分を別にして、音楽映画としての観点だけで見れば、「全くその才能が無いのにジャズ・ピアニストを目指したが結局ダメでした」というしょうもない話を見せられたことになります。
●ジャズという音楽にはそれほど関心は強くなくて、ラブコメとして観る方はある程度楽しめたかと思います。
・しかし上に挙げた素晴らしい音楽映画群が音楽とドラマの相乗効果で5つ星映画になったようなことは起きません。
・この監督、映画作家としては結構面白い作り方ができる人だと思うのですが、今回はテーマ選定で間違ったのでは?と思わざるを得ません。
(ジャズがテーマじゃないほうが良かったのではと思います。この映画を観る限りチャゼル監督はジャズのことを全く分かっていないと思われます)
・セブがジャズを聴く時、CDではなくレコードに拘っていることも不可解としか見えません。
・フリージャズと言う言葉が不用意に使われましたが、フリーのフの字も関係ありませんでした。
・また一応ミュージカル形式になっていましたが、そのミュージカル具合も中途半端で、これならストレートに作るだけで良かったと感じました。
アメリカ映画のミュージカルの伝統に寄り添う気持ちがあったかもしれませんが、成功していません。
●最後の悪口ですが、ミアは女優として成功したようなのですが、彼女が成功する理由も全然納得、理解できませんでした。
繰り返しになりますが、監督・製作者はこの映画をどういう意図で作ったのか?という疑問が頭の中を駆け巡りました。
ーーーこんな不可解な映画がアカデミー賞で受賞するということも理解できません。評価した人々は一体この映画のどこを評価したのでしょうか?
やはり星一つですネ。 ★
もともと期待してなくて見たのが幸いでした。
追記)デイミアン・チャゼル監督の前作「セッション」はドラム(ドラマー)が主題ということで、評価する人も多いようですが、同じような思いをしたくないので観る気がしません。(しかし前作も音楽が主題なんですね、チャゼル監督、音楽が好きなんだ・・・???)