アンソニー・ブラクストンAnthony Braxtonというフリージャズのアルトサックス奏者を是非聴いてもらいたい
フリージャズって何だ? という記事を書きました。
そこで何人かの〈フリースタイル・ジャズメン〉を紹介しました。
そこに入れるべきだったのに入れられなかったサックス奏者がいます。
それが今日紹介したいアンソニー・ブラクストンです。
ブラクストンは1945年生まれのアメリカの黒人サックス(&フルート)奏者、作曲家です。
まずはブラクストンの音楽がどんな音楽なのかを聴いてもらいましょう。
ソロ Solo
ソロ演奏から行きます。
アルバム〈For Alto〉から
〈To Pianist Cecil Taylor〉と題された曲です。(5:18)
セシル・テイラーもフリージャズを代表するピアニストです。
⇨ この部分は削除されましたので、代わりにフルアルバムをアップします。
どう感じられましたか?
意外にアルトサックスの音がきれいだ、と感じられた方がいますか?
もしそう感じられたらあなたの耳は正しい!。
少なくとも楽器を演奏するという点で基本的な音は重要です。
もちろんフリージャズでは「ブギャー」みたいな騒音に近い音を出すことはあります。
しかし、それはあくまでも(表現の手段として)そういう音を出しているのであって、いくらフリージャズでもそんな音しか出せない訳ではないのです。もちろん。(ピカソがデッサンが巧いのと同じです)
ブラクストンの音は音楽的で、聴き続けたいと思わせるものだったと思います。
このアルバム〈For Alto〉では8曲が演奏されますが、どの曲もある個人へデディケートされたものです。
00:00 A1. Dedicated To Multi-Instrumentalist Jack Gell 00:43 A2. To Composer John Cage 10:14 A3. To Artist Murray De Pillars 14:31 A4. To Pianist Cecil Taylor 19:50 B1. Dedicated To Ann And Peter Allen 32:44 C1. Dedicated To Susan Axelrod 43:09 C2. To My Friend Kenny McKenny 53:15 D1. Dedicated To Multi-Instrumentalist Leroy Jenkins
デュオ Duo
次は一人増えてデュオでの演奏です。
参加するのはドラムです。
闘士マックス・ローチが参加です。
ドラマー、マックス・ローチはフリーではない通常ジャズをやっている人ですが、その言動と演奏はかなり過激というか、まあラディカルな人です。楽しみですね。(?)
曲は〈Birth〉と名付けられています。アルバムは”Birth And Rebirth”です。1978年
聴きましょう。(9:41)
↑2人のおっさん、顔つきもすごいです。
いやー、カッコよかったですね。 えっ?違います?
マックス・ローチのドラムもジャズの伝統を踏まえながらも戦闘的で、すごくカッコいいと思いました。
ブラクストンは基本は前と同じようにきれいなサックス音なんですが、時にフリーキーな音も出していました。 やはり一人増えるだけで音楽がずいぶん違いますネ。
これは黒人の音楽(ブラック・ミュージック)だと強く感じました。
いやー、ほんとにイイです。
トリオ Trio
次!トリオ行きます。
有名な Town Hall Live です。 1972年です。
曲はスタンダード・ナンバー〈All The Things You Are〉(13:55)
Anthony Braxton (as)
Dave Holland (b)
Philip Wilson (ds)
いかがですか? 最初からフリーキートーン出してますが、ちゃんとスタンダード〈All The Things~〉をやってます。
D.ホランドのベースとP.ウィルソンのドラムスも素晴らしいです。
カルテットでのライブ演奏
この辺でライブ演奏を見ましょう。 スイスのモントルー・ジャズ・フェスティヴァル(1975)でのライブ映像です。曲はブラクストンの自作曲〈40M〉(8:20)
Anthony Braxton-alto sax
Kenny Wheeler-trumpet (ケニー・ホイーラー)
Dave Holland-bass (デイヴ・ホランド)
Barry Altschul -drums (バリー・アルトシュル)
いやいや、こうなるとフリージャズか?という疑問符がつくまともな演奏です。
楽しめるジャズ演奏です。聴衆も喜んでいますね。
先ほど、ブラックミュージックという言葉を使いましたが、ここでの参加奏者3人は白人なのですねー。
知らない方のために一応書いておきますが、3人とも知名度も実力もある一流ジャズメンです。
スタンダード 2003
えー、最後に最新盤(と言っても2003年)ですが、19 Standards (Quartet) というスタンダード・ナンバーを19曲やっているという4枚組ボックスセットアルバムから1曲聴きましょう。
曲はコルトレーンの〈Afro Blue〉です。(12:15)
メンバーは
Anthony Braxton – saxophones
Kevin O’Neil – guitar
Andy Eulau – bass
Kevin Norton – percussion.
時代が21世紀になりジャズの状況も変化しました。
ブラクストンがこうしてスタンダード集を出すことになりました。
この曲はコルトレーンに倣い、ソプラノサックスでの演奏ですが、もうフリーとかの言葉は要らない(意味がない)と感じます。
何しろコルトレーンが全部やっちゃってますからね!
コルトレーンより過激になることは死を意味しますから。(? ホントか?)
他のスタンダード・ナンバーズをどうやっているか興味が尽きません。
*このブログでは基本的に自分が持っているCDについて書いているのですが、これは持っていません。
買おうか?と迷っているところです^^
まとめ
アンソニー・ブラクストンの軌跡を辿りました。
どう思われたでしょうか?
自分で紹介しておいて最後にこう書くのも何ですが、非常にまともな、伝統的なサックス奏者でした。
もう、フリージャズという言葉は死語かもしれないと思わされました。
だって普通のJAZZ ですもんね。
多分コルトレーンが死んだ1967年(ちょうど50年経ちます)でフリーは終わったのかも知れません。
あるいは、アルバート・アイラーが死んだ1970年が。
今ではこういう↓80年代を中心にイタリアのレーベル、BlackSaint,SoulNote に録音したブラクストンの演奏を集めた8枚組ボックスセットなども出ています。
ーーーThank you very much for visiting the site.