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    カテゴリー : 音楽TV

「もうひとつのショパンコンクール」BS1放送、ショパンコンクール2015、日本人ピアノ調律師、FAZIOLIというピアノ

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昨年(2015年)末12月23日21時からNHK/BS1 で放送された「もうひとつのショパンコンクール」という番組が大変興味深かった。

90分に渡る映像は見ごたえ充分だった。

特に各ピアノメーカーの日本人調律師にスポットがあたり、またFAZIOLIという新興ピアノのことも詳しく描かれた。

 

 

ショパンコンクール2015

番組は昨年(2015年)10月にポーランドのワルシャワで行われた第17回ショパン国際ピアノコンクールのドキュメントだった。

「もうひとつの」という意味は、この番組は調律師にスポットを当てていて、ピアニストたちを裏方として支え、自社のピアノから優勝者、入選者を出したいと願う人たちの戦いを意味している。

ショパンコンクール自体に興味ある方はこちらから↓

http://chopincompetition2015.com/

 

本戦前の練習日(5日間)、ステージには4台のピアノが置いてある。
出場するピアニストたち(今回は78名)は自由にピアノを試し弾きして、自分が使うピアノを選ぶことができる。

4台のピアノは

○ STEINWAY&SONS   

○ YAMAHA

○ KAWAI

 FAZIOLI

の4社のものだった。

まずそれが不思議だった。べ―ゼンドルファーとかが入っているのかと思っていたが、調べるとべ―ゼンは21世紀になって経営不振からYAMAHAに買収されたとのこと。 

そこで入ってきたのが、イタリアの振興メーカーFAZIOLIファツィオリだとのこと。
2010年のショパンコンクールで始めて採用され、2014年のルーベンシュタイン・コンテストで1位~3位をファツィオリを弾くピアニストで独占し一躍脚光を浴びているピアノメーカー

FAZIOLIというピアノメーカーの日本人調律師

 

このドキュメントの主人公は各メーカーの日本人調律師たち。
特に丁寧に描かれるのがFAZIOLI社のただ一人の調律師、越智 晃(おち あきら)という日本人だった。 

 

越智氏は音楽大学の調律科を卒業し、スタインウエイに入る。すぐに頭角を現し若くして他の調律師を指導する立場になる。それからFAZIOLIに出会い、そのピアノの音にほれ込む。

FAZIOLIを興したFAZIOLI氏からも「100万人に一人の耳を持つ天才」と認められ、(いわば相思相愛状態で)FAZIOLI社のただ一人の調律師となる。

FAZIOLI社の躍進に越智氏の存在は欠かせないものになっている。

FAZIOLI氏が越智氏の調律したピアノを弾く

 

調律師の仕事は一般人には分からない繊細な作業の積み重ねだという。

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村上春樹の小説「偶然の旅人」 

ここから急に話が飛びますが、村上春樹にホモセクシュアルのピアノ調律師を主人公にした短編小説があります。
それは「東京奇譚集」に納められた「偶然の旅人」です。

これを読むとあらためて村上春樹は短編の名手だと思います。このような小説を書けた日本人作家は今までいなかったように思います。

主人公の姿が越智氏にダブります。越智氏の所作が何となくホモっぽく見えるのはこの小説を読んだせいでしょうか。
もしそうでなかったら越智さんすみません。 
(*ちょっと脱線しました。本編に戻ります)

ショパンコンクール2015でのFAZIOLIの戦い

しかしやはり有名ではない新興メーカー、FAZIOLIを弾くというピアニストはなかなか出てこない。

ーーーショパンを意識して柔らかく暖かい音作りをセッティングしたのだが、それがピアニストに受け入れてもらえない。

他のメーカーの音はもっと派手でホールに響くセッティングになっているようだ。

 

 

ピアニストに選んで、弾いてもらわないことには勝負は始まらない。 

そこで越智氏は思い切った行動に出る。
予備で持ってきていた別のアクション(打鍵する部分、ハンマー、ピアノの心臓部)と急きょ入れ替えることだ。作業は深夜に行われた。

交換したアクションは明らかにより音が響くようになった。

アクションを入れ替えた翌日、やっと一人のピアニストがFAZIOLIを弾いてくれることになった。
中国人の女性ピアニスト、ティアン・ルーだ。

彼女はただ一人のFAZIOLIを弾くピアニストとなったので、越智氏は彼女の好みの調整をピアノに施す。
「小さなメーカーの特典ですよ」と越智氏は笑いながら、語る。

*ティアン・ルーの夫ユーリはかってショパンコンクールに出場したピアニストだ。
しかし、その時ユーリは高熱を発し指も動かなくなり、3次予選で棄権したという。

*そのティアン・ルーも1次予選で敗退する。

KAWAIの人気

ポーランドではKAWAIの人気が高いという。
ショパンの音楽に合っているというイメージを持っている人が多い。

今回のコンクールでもKAWAIを選ぶピアニストが11人いる。

KAWAIの調律師は小宮山氏。昔から、こまやかなピアニストのサポートを行ってきたという。

  YouTubeを使うこと

ちょっと驚いたのは、調律師たちが夜ホテルでYouTubeを見てチェックしていたこと。
予選の段階からすべての映像が主催者によって即時YouTubeにアップされているのだ。

ファイナル3位 ケイト・リウの演奏

ここで、そのYouTubeでファイナルで第三位に入った Kate Liu(アメリカ)の演奏をみてみよう。ピアノコンチェルト1番

 

それにしても、ショパンのピアノコンチェルト1番はあの印象的なポーランド民謡の風合いのあるメロディが繰り返されるのだが、誰の演奏を聴いても感動します。

個人的には私はKate Liu さんの演奏↑が好きです。ちなみに審査員3名が満点の10点をつけています。これは優勝者より多い。

*Kate Liu は予選ではYAMAHAを弾いていたのだが、本戦(ファイナル)ではSTEINWAYに変更した。

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 つづき・ファイナルの結果はこちらで。⇨  chopin-competition-final ⇒

 

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ジャズすきもの会長: 団塊世代ど真ん中です。 定年退職してからアルト・サックスを始めました。 プロのジャズサックス奏者に習っています。 (高校時代にブラスバンドでしたけど当時は自分の楽器を持っていませんでしたので、それっきりになりました) 主にジャズについて自由に書いています。 独断偏見お許しください。

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