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スタン・ゲッツSTAN GETZ:白人テナーサックスの最高峰の傑作・名作CDアルバムを聴く

 
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団塊世代ど真ん中です。 定年退職してからアルト・サックスを始めました。 プロのジャズサックス奏者に習っています。 (高校時代にブラスバンドでしたけど当時は自分の楽器を持っていませんでしたので、それっきりになりました) 主にジャズについて自由に書いています。 独断偏見お許しください。

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■スタン・ゲッツ (1927/02/02-1991/06/06, 64歳没)

という人の音楽と人生については、村上春樹が著書「ポートレイト・イン・ジャズ」の中で、見事に書ききっています。

そこから次の一文を引用させてもらいます。

「僕はこれまでにいろんな小説に夢中になり、いろんなジャズにのめりこんだ。でも僕にとっては最終的にはスコット・フィッツジェラルドこそが小説であり(the Nobel)、スタン・ゲッツこそがジャズ(the Jazz)であった。」

ゲッツの凄いところを付け加えると、膨大な録音があるにも関わらず、どれを聴いても駄作のようなものがないことです。いつもゲッツがそこに居ます。
筆者もまだ聴いていないアルバムがあるのですが、いつまでも飽きないで聴き続けることが出来る愉しみを残してくれています。

便宜的にゲッツが活躍した時期を下の3期に分けたいと思います。
(非常に乱暴な分け方ですが)

前期 1950年代

中期 1960,70年代

後期 1980年代 

ゲッツという人はそれぞれの時期に最高の作品があることに驚きます。

 

余りにも多くのアルバムが出ていますので、まだ未聴のものもあります。
そこで筆者が持っているいるものの中からピックアップして紹介させてもらうことになります。

ゲッツはウクライナ系ユダヤ人移民の子です。

前期の傑作(’50年代)

前期の傑作はRoost Session から始めます。(’50~’52)

コンプリート・ルースト・セッション

現在この時期の演奏は下写真のComplete Roost SessionのVol.1とVol.2 の2枚にまとめられてます。

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Gone With The Wind(’50)

1曲目はVol.1から〈Gone With The Wind〉

Stan Gets(tenor sax),Al Haig (piano),Tommy Potter(bass),Roy Hayes(ds)

Autumn Leaves (’52)

2曲目はVol.2から「枯葉」です。

Stan Getz (tenor sax), Duke Jordan (piano), Jimmy Raney (guitar), Bill Crow (bass), Frank Isola (drums)

*レスターヤング直系と思われるクールでスムースなサウンドです。しかし20代前半でこのような完成した(成熟した)演奏ができることが驚きです。
「天才」としかいいようがないです。

スタン・ゲッツ・アット・ストーリービル

次は1951年10月28日にボストンのクラブ「ストーリーヴィル」でライブ録音されたものです。

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(*私が持っているいるものはジャケットが違うのですが、現在はこれしかありません。気に入ったジャケだったのですが…。しかしおそらくこれがオリジナル・ジャケット・デザインなのでしょう)

このアルバムから1曲となると〈Move〉を選ばざるを得ません。

というのが最初に述べた村上春樹「ポートレイト・イン・ジャズ」で選ばれた1曲がそれなのです。

この曲(というかこのアルバム全体なのですが)に対する村上春樹の賛辞は、小説家としての筆力を尽くしたものになっています。
その文章だけでも読む価値があります。
その文に影響を受けた人が数多くいて、音楽そのものより有名になっていると言っても過言ではないくらいです。

Move (’51)

*先ほど言ったのはこの↑ジャケットのことです。

Stan Getz(ts)
Al Haig(p)
Jimmy Raney(g)
Teddy Kotick(b)
“Tiny” Kahn(ds)

村上春樹はこのリズム・セクションを「息を呑むほど完璧」と書いています。

確かに素晴らしいリズム・セクションです。
私は特に、ギターのジミー・レイニーとピアノのアル・ヘイグのきれいな音でのキッチリとした演奏が好きです。

しかし春樹氏はこう続けます。「しかし、それ以上に遥かに、ゲッツの演奏は見事だ。それは天馬のごとく自在に空を行き・・・・」(後は自分で読んで下さい^^)

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スタン・ゲッツ・プレイズ

次のアルバムは1952年12月録音の〈Stan Getz Plays〉です。

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このアルバムはご覧のようにジャケットの良さでも有名です。

Lover Come Back To Me

演奏メンバーは先ほどの「枯葉」と全く同一です。

アット・ザ・シュライン (’54)

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これもまた有名なアルバム、1954年11月、ロサンジェルスのシュライン・オーディトリアムでのライブ・アルバムです。ここにはトロンボーンのボブ・ブルックマイヤーが参加していることが特徴です。

ウェスト・コースト・ジャズ (’55)

このアルバムもまたデヴィッド・ストーン・マーティンがカバー・イラストを描いたジャケットで有名です。

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このアルバムから1曲目の〈East Of The Sun〉を聴きましょう。

Stan Getz – Tenor Saxophone
Conte Candoli – Trumpet
Lou Levy – Piano
Leroy Vinnegar – Bass
Shelly Manne. – Drums
まさにウエストコースト・ジャズを代表する面々です。

 

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フォー・ミュージシャンズ・オンリー (’56)

ゲッツ、ディジー・ガレスピー、ソニー・スティット3人名義のアルバムです。3人とも名人芸を見せる人ですから悪かろうはずがありません。

Dark Eyes

を聴きましょう。

Tenor Saxophone — Stan Getz
Trumpet — Dizzy Gillespie
Alto Saxophone — Sonny Stitt
Bass — Ray Brown
Drums — Stan Levey
Guitar — Herb Ellis
Piano — John Lewis
これもまた凄いメンバーですね。ちなみにスティットはアルトサックスに徹しています。

ゲッツ・アンド・J.J.ジョンソン・アット・ザ・オペラハウス (’57)

ノーマン・グランツ(プロデューサー)のJATPコンサートでのライブ演奏からです。グランツはこのような大物同士の組み合わせが得意でした。

My Funny Vallentine

J.J. Johnson (trombone), Stan Getz (tenor sax), Oscar Peterson (piano), Herb Ellis (guitar), Ray Brown (bass), Louis Bellson (drums)

*ノーマン・グランツのおかげで、このような信じられないビッグな面々の共演を聴くことが出来ます。

中期(’60~’70年代)の名作

*この調子でやっていたらいつ終わるかわからないので、この後は急がさせてもらいます。特に中期はボサノヴァが多い時代ですので大幅に省略します。しかし見逃せない作品がありますので、それには触れたいと思います。

フォーカス

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’61年にEddie Sauter の作編曲でストリング・アンサンブルと共演した意欲作〈FOCUS〉を発表します。 

ボサノヴァ・アルバム

そしてゲッツのボサノヴァ時代が始まります。

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画面左がボッサ作品第一号〈Jazz Samba〉(’62)です。
共演したのはチャーリー・バードというアメリカのギタリストです。
バードはジャンゴ・ラインハルト系のギタリストだったのですが、このアルバムによって、アメリカにボサノヴァを紹介したギタリストとなりました。

これが好評だったので続編の〈Jazz Samba Encore!〉(’63)が作られました(写真右)この時のギタリストはルイス・ボンファです。
ボンファは「黒いオルフェ」の作曲者としても知られるブラジルのギタリストです。

〈Jazz Samba Encore!〉から

Sambalero

ゲッツ/ジルベルト  Getz/Gilberto  (’63)

そしてボサノヴァを決定的に世界ヒットさせたアルバムの登場です。

getz-gilbert

このアルバムはゲッツというよりは、ブラジルから来た二人ジョアン・ジルベルトとアントニオ・カルロス・ジョビンのマジックでボサノヴァという音楽の魅力を世界に知らせることになりました。

まさにそれはマジックで、このアルバムは今聴いても新鮮です。 

Desafinado

The Girl From Ipanema

また当時のジョアンの奥さんだったアストラッド・ジルベルト(たまたまスタジオに同伴していたのが急遽歌うことになったと言われていますが…)を「イパネマの娘」の歌唱で世界的スターとしました。

最初ジョアンが歌って、その後アストラッドの歌、そしてゲッツのサックスソロです。

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スウィート・レイン (’67)

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ゲッツは’67年に初めてピアノのチック・コリアを起用し、ロン・カーター(b)、グラディ・テイト(ドラムス)というカルテットで〈Sweet Rain〉という作品を作ります。
完全にジャズに回帰した作品になりました。(いや〈O Grande Amor〉などのボッサ曲も入っていますが)1曲目の〈LITHA〉など途中からテンポを急速に変えるハードなジャズ曲になっています。コリアのピアノも新鮮です。

Litha

スタン・ゲッツ・アンド・ビル・エバンス

ところでゲッツはビル・エヴァンズとの共演盤を2枚出しています。
’64年と’74年の10年おいての2枚です。

getzevans 
getz-billevans 

My Heart Stood Still

左の’64年のアルバムから〈My Heart Stood Still〉 という曲を聴きたいですね。
Stan Getz (ts), Bill Evans (p), Richard Davis (b), Elvin Jones (ds)

リズム隊が強力です。(特にエルヴィン!)
エヴァンズはいつでもどこでもエヴァンズです。

Emily

そして右のアルバムはこれまた名盤です。 表題曲の〈But Beautiful〉が有名ですが、ここでは実に美しいメロディの曲〈Emily〉の方を聴きましょう。

Stan Getz (ts) Bill Evans (p) Eddie Gomez (b) Marty Morell (d)
というメンバーは当時のビル・エヴァンズ・トリオにゲッツが入ったものです。
ベルギー、アントワープでのジャズ・フェスでのライブ録音です。

●’74年にチック・コリアの作品を多く取り入れた〈Captain Marvel〉
などの作品もありましたが、これは省略です。

どんどん先を急ぎましょう。

ここまで聴いてこられて、ゲッツの音が少しづつ変化していることに気付かれた方もあると思います。

初期のあくまでもソフトでマイルドな音が、中期では力強さが加わってきています。後期ではさらに強い音を出すようになります。
これは筆者の私見ですが、コルトレーンの影響があったと思われます。

もうゲッツの代名詞だった〈クール〉という言葉では表せない音楽です。
ついには「咆哮」もきかれるようになります。

ーーーーーーーーーーー筆者

’75年の珍しいライブ盤 Live At the Left Bank

リッチー・バイラーク:ピアノ
デイヴ・ホランド:ベース
ジャック・デジョネット:ドラムス
というゲッツとしては珍しいメンバーです。

タイトル。チューン〈My Foolish Heart〉を聴きます。

このメンバーでも全く自分のスタイルで押しまくゲッツです。そんなゲッツが最高です!

後期(’80年代)の名作

’81年のボッサアルバム〈The Dolphin〉

ドルフィン 

ルイス・エサが作った名曲〈Dolphin〉はさまざまな人にカバーされていますが、ゲッツもこのように採り上げました。

Stan Getz (ts), Lou Levy (p), Monty Ludwig (b) , Victor Lewis (ds)
美しいピアノはルー・レヴィ―です。

ゲッツとチェット・ベイカーの共演盤3枚(’83)

’83年にストックホルムでチェット・ベイカーとの共演盤が3枚あります。

円熟の境地のゲッツとベイカーを聴くことが出来ます。

この3枚ですが、残念ながら1つ目(3枚組)は入手困難になっています。

Dear Old Stockholm

1つ目から〈Dear Old Stockholm〉を聴きます。

この時のピアノはジム・マクリーニー、ベースはジョージ・ムラーツです。

ヴォヤージュ (’86)

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CDで聴く限りこれがピアニスト・ケニー・バロンとの最初の記録です。バロンとはここから最後まで(ゲッツが死ぬまで)共演を続けます。

このアルバムからは〈Dreams〉を聴きましょう。

DREAMS

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アニバーサリー & セレニティ

1987年7月6日、コペンハーゲンのクラブ「カフェ・モンマルトル」でライブ録音された音源が次の2枚のCDに分けて発表されました。

gets-anniversary 
getz-serenity 

メンバーは
Stan Getz(ts),Kenny Barron (p),Rufus Reid (b),Victor Lewis (ds) です。

この2枚のアルバムはジャズファンなら必携と言えるアルバムです。

何故なら全ての曲(左7曲、右5曲)が素晴らしいからです。

よってどれを聴いてもいいのですが、〈Anniversary〉からはビリー・ストレイホーンの曲〈Blood Count〉を。

Blood Count

〈Cerenity〉 からは〈I Remember You〉を。

I Remember You 

 

ソウル・アイズ

’89年にグラスゴーとコペンハーゲンでライブ録音されたアルバムが〈Soul EYES〉です。
これも素晴らしいライブアルバムです。

<HUSH-A-BYE>を聴きます。

Stan Getz (ts), Kenny Barron (p), Ray Drummond or Yasuhito Mori (b), Ben Riley (ds)

 

遺作:ピープル・タイム  

最後になります。

gets-peopletime

・1991年3月の3日~6日まで、ゲッツはケニー・バロンとのデュオで、コペンハーゲン、カフェ・モンマルトルに出演します。この〈People Time〉はその時の記録を2枚組CDとしたものです。

・今はその際の全演奏を収録した「完全版」も出ているのですが、私にはそれはtoo much に感じられます。この2枚組全14曲でenough だと思います。

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・この14曲はジャズの歴史に刻まれる名演奏として残っていくことでしょう。

ゲッツに残された時間はちょうど3ヶ月しかありませんでした。
(1991年6月6日死亡)

・死因は肝臓がんでしたから、ゲッツは自らの死期を悟っていたと思われます。そういう意味ではまさに「白鳥の歌」です。

・テナーサックスを吹くという行為は意外に重労働ですから、体力の問題もあったはずなのですが、この演奏は力強いものです。並外れた体力をもっていたゲッツだからこそ出来たことだと思います。

First Song(ファースト・ソング)

*この曲はベーシストのチャーリー・ヘイデンが奥さんのルースのために作った曲ですが、美しいメロディの曲なのでスタンダード化しつつある曲です。

この全14曲は是非聴いて頂きたいものです。

【収録曲】

DISC:1
1. イースト・オブ・ザ・サン,ウェスト・オブ・ザ・ムーン
2. ナイト・アンド・デイ
3. アイム・オーケイ
4. ライク・サムワン・イン・ラヴ
5. スタブルメイツ
6. アイ・リメンバー・クリフォード
7. ゴーン・ウィズ・ザ・ウィンド

DISC:2
1. ファースト・ソング
2. ゼア・イズ・ノー・グレイター・ラヴ
3. 飾りのついた四輪馬車
4. ピープル・タイム
5. 朝日のようにさわやかに
6. ハッシャバイ
7. ソウル・アイズ

 

まとめ

 

☆というわけで、今回はスタン・ゲッツの’51~’91年の40年間の名作アルバムについて、個人的に振り返りました。
25枚のアルバムを紹介できました。

☆原則的に私が所有しているアルバムから採り上げましたので、抜け落ちているものもあるでしょうがそこは容赦ください。

若い時から麻薬に染まり、刑務所収監も経験したゲッツは、あらゆる意味でジャズを、そして白人がジャズをやるということを身をもって体現した テナーサックス奏者=ジャズの巨人 でした。

 

★それではまた、次回の記事でお会いしましょう★

★最後まで付き合って頂いてありがとうございました

村上春樹が訳したゲッツの評伝です。

☆次はコルトレーンの予定です☆

⇒ ジョン・コルトレーン:ジャズを変えた男の名演、名作、代表作

 

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団塊世代ど真ん中です。 定年退職してからアルト・サックスを始めました。 プロのジャズサックス奏者に習っています。 (高校時代にブラスバンドでしたけど当時は自分の楽器を持っていませんでしたので、それっきりになりました) 主にジャズについて自由に書いています。 独断偏見お許しください。

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