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丸谷才一の最高傑作は「横しぐれ」と「笹まくら」と断言しよう

 
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団塊世代ど真ん中です。 定年退職してからアルト・サックスを始めました。 プロのジャズサックス奏者に習っています。 (高校時代にブラスバンドでしたけど当時は自分の楽器を持っていませんでしたので、それっきりになりました) 主にジャズについて自由に書いています。 独断偏見お許しください。

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丸谷才一(1925ー2012)
は小説家、文芸評論家、随筆家、翻訳家と巾広く活躍した人ですが、

その小説はというと、一般的に読まれているのは「女ざかり」「裏声で歌へ君が代」「たった一人の反乱」くらいで、初期作品「笹まくら」「横しぐれ」を挙げる人はあまりいないようです。

私はタイトルに書いたように、丸谷才一の小説家としての最高傑作は
「横しぐれ」と「草まくら」だと思います。

横しぐれ

この作品を初めて読んだのは筆者が30歳ころだったと思います。

ひどく印象に残ったのですが(その時から「これは傑作だ!」と思いました)
本は紛失したままになっていました。

最近、中古本を買い、再読したのですが、若い頃に読んだときと同じ感動があり、終盤の同じところで鳥肌が立つような感覚に襲われました。

純文学小説なのに、まるでミステリーを読むような面白さがあります。
純文学エンターテイメントと呼びたくなります。

 

あらすじというか内容の紹介ーー種田山頭火のことなど

主人公は一人称「わたし」で書かれていますが、職業は大学の先生で専門は中世の和歌、連歌などの国文学という設定です。

小説の書き出しは次のように始まります。

病気になってから父の語ることは昔の話ばかりだった。

父は働きづめに働くだけの、産婦人科の町医者だった。

病気になってから昔話ばかりするのだが、その中で一つだけ実に嬉しそうに語るのが、戦争が始まる少し前に四国に行った時の話だった。
同行したのが旧制高校の国語の教授で、西鶴や秋成や八文字屋本が専門のくせに日曜にはきちんと教会に行くクリスチャンであり、しかも大の酒好きという変わり種の黒川先生だった。

その二人が四国の道後温泉の茶屋で飲んでいるときに、馴れ馴れしく話しかけてきた坊主がいて、三人で飲むことになり、とても楽しかったのだが、結局はその坊主にたかられたという話だった。

「わたし」はその坊主が放浪していた自由律の俳人、種田山頭火だったのではないかとという推理をするのです。

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そのキーワードとなるのが小説のタイトル「横しぐれ」という言葉なのです。

父が亡くなったあと、弔問に来た黒川先生と話をし、この四国旅行のことも話題にします。

黒川先生も良く覚えてあってこう語るのです。

急にお天気が崩れましてね。雨まじりの風というか、横なぐりの時雨と言うか、その時雨を見て、わたしが横しぐれだとつぶやいたら、坊主がえらく感心して・・・

「まさにその通りですな、とか、それでいいわけですな、とか、何度も繰り返して」

 

その黒川先生も亡くなったあと「わたし」は父の生涯に色をそえようと、旅先で会った坊主が山頭火であったことを証明しようと試みる(何しろ国文学の学者ですから)。

山頭火の「時雨」に関する句を調べ尽くす。

また、山頭火がつけていた日記がてがかりとなる。

・うしろすがたのしぐれてゆくか

・おとはしぐれか

ーーー種田山頭火

 

父と黒川先生が坊主に出会ったのは昭和14年11月30日と特定できた。

この日の後に、山頭火に「横しぐれ」の句が現れれば、いい証拠となると考える。

しかし、肝心の「横しぐれ」の句はみつからない・・・・。

そこでさまざまな想像をする。

芭蕉について山頭火が日記に書き残したことなども紹介される。(それも小説の本筋に重要なことなのです)

そこから「わたし」が出会う重要な人物が二人描かれる。

こんな言葉の探求なども行います。

しくれ

死暮れ

横死

そして、

横しぐれ、山頭火を巡る旅は意外な方向にズレてゆく。

真面目一方だった父の生涯に華を添えようと初めた作業だったのに

隠された父の過去が・・・・・・

このあたりのミステリーじみた展開は、読んでいてゾクッとする。

読み手をぐいぐいと、引きつけてゆく丸谷才一の見事な小説手腕に驚きます。

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笹まくら

こちらも「横しぐれ」に続いて読みました。こちらの方が長編ですが、やはり圧倒されました。

「笹まくら」は徴兵忌避者の物語です。

時間が縦横無尽に飛び交うのですが、それが自然に、無理なく読めることに驚きます。
行を空けることもなく時代が変わります。かなり斬新な手法だったと思います。

「横しぐれ」で字数を費やしましたので、米原万里さんの文からの引用にします。筆者より余程巧く伝えてありますから。

太平洋戦争中の五年間を徴兵を忌避するために実家を捨て学歴を隠し偽名を使って日本各地を、ときには朝鮮半島まで足をのばして逃げ回った過去を持つ浜田庄吉は、二十年後の今は某私立大学の職員におさまり、若く美しい妻をめとり、地味で平凡ながら概ね満足な暮らしを送っている。そこへ、逃亡中ねんごろになり命の恩人ともなった年上の元恋人阿貴子の死亡通知が届く。

(中略)
情景や登場人物たちの微妙な心理の綾やその空気までが伝わってくる。と同時に、国家と個人というマクロな主題が全編を貫いている。徴兵忌避に実際に踏み切る直前まで逡巡し思索を重ねた浜田が到達した結論「国家の目的は戦争だ」は、世紀を隔てた今も切実に響く。作品全体を通して日本と日本人の戦後が、冷静に穏やかに洞察される。

思いがけない不祥事によって現在の日常が崖っぷちに追い込まれた瞬間、浜田の脳裏を阿貴子と初めて結ばれた日の場面がよぎる。そこは桜の咲き誇る隠岐。晴れやかで悲しくて滑稽で、胸が痛くなるほど美しいラブシーンである。過去に脅かされ続けていた浜田は、ここで初めて過去によって現実から開放される。

ーー米原万里「打ちのめされるようなすごい本」から引用

 

まとめ

丸谷才一の2冊の作品を紹介しようとしたのですが、「笹まくら」の方は米原万里さんの引用に頼ることになりました。

丸谷才一は2012年に亡くなり、米原万里さんも2006年に亡くなっています。

最後まで読んで下さってありがとうございます。

丸谷才一の2冊を手にとって頂くようなことがあれば幸いです。

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