ジャズ漫画BLUE GIANT :1巻~8巻まとめ・敢えて突っ込みを入れる

      2017/01/23

BLUE GIANT 既刊の1巻~8巻を読んだところで、

充分頑張ってあることを承知の上で、突っ込みを入れさせてもらいます。

大きな音で激しくブロウするばかりが良い演奏ではない

主人公・大 がテナーサックス奏者ということもあって、今までのところ、でっかい音(太い音)で激しくブロウするシーンが目立つように思います。
これではジャズは騒々しい音楽と誤解されそうな気がします。

漫画での観客のノリも「イエーイ!」みたいな感じばかりなので、心配してしまうのです。

ジャズにはバラード演奏もある、なんてことを言いたい訳ではありません。

まあ、まだ町おこしジャズ・フェスに出ている段階であるし、まだ10代ということで、これで良いのかもしれません。

「音がでかいだけ」のサックス・プレイヤーでは「世界一のジャズ・プレイヤー」になれる訳はないですからね。(音が大きいことは大きな武器ですが)
その辺の成長過程を漫画で、今後どう描いていくのか。かなり難しいことだとは思いますが、作者に期待します。

*ここで正直に書きますが、この記事はジャズ漫画「BLUE GIANT」を題材にして、実は私のジャズ観というか、ジャズに対する思いを書くことが目的になっています。
しかし同時に「BLUE GIANT」の今後についての注文でもあるのです。

sponsored Link

ジャズという音楽は実は停滞していることを作者はどう描くのか

この漫画の時代設定は現代ですよね?

描かれる主人公たちはシリアスに本物のジャズを追求している設定ですよね。

◎私の記事「3巻~7巻・徹底解説」で大が聴いている音楽が50年代~60年代の、いわゆるハードバップ・ジャズばかりなのが気になると書きました。
現代のテナー奏者、デヴィッド・マレイやジェームス・カーターも聴いて欲しいと書きました。彼らは現代の偉大なサックス奏者だと思うからです。

 ◎第8巻でSo Blue の平(たいら)から厳しいことを言われたことがきっかけでピアノの雪祈が壁にぶち当たることが書かれています。

雪祈は小さなクラブでのライブでピアノを弾きながらつぶやいています。 「くそっ、まただ。いつもの手グセのメロディになっている!」 「・・・これも!コードに沿った ただの音階(スケール)の羅列・・・ 」 リアルですね。プロのジャズ・ミュージシャンならみんな思うことでしょう。
bg-5

1950年代の終わりころのビル・エヴァンズ、
1960年代初めのハービー・ハンコック   
新しい音の選び方、コードの縛りを離れた演奏を実際にやったピアニストです。

そしてウェイン・ショーターというサックス奏者。

◎第7巻の巻末スペシャルで著者は、まさにそのハービー・ハンコックとウェイン・ショーターにインタビューしていました。
そのインタビューで物足りなかったのは、マイルス・デイヴィスとジョン・コルトレーンへの言及が余り無かったことです。
この2人はハンコックとショーターにとって大きな存在であるはずです。
余りにも大きすぎて、却って語ることができなかったのかもしれません。

◎(誤解を恐れずに言えば)ジャズは1967年にはひとつの完成に達していて、その後は停滞しているという考えがあります。

ウェイン・ショーターは身を持ってそれを体験したサックス奏者だと思います。ハンコックはピアニストとしてそれを体験した人です。
何が言いたいのか、分かってもらえないでしょうね。もう少し説明させてください。

1967年はジョン・コルトレーンが死んだ年です。(7月17日です)
その時 ショーターとハンコックはマイルス・デイヴィス・クインテットのメンバーでした。
コルトレーンが死んでしばらく経ったころ、彼らはヨーロッパをツアーしていました。 

その映像がいくつも残されています。
その中から1つを選びますので、是非聴いてください。
1967年11月7日、ドイツでのMiles Davis Quintet のライブ演奏です。
曲は〈Walkin’〉です。

上↑の演奏を含むDVDに対して私がAmazonレビューに書いた文章の引用です。↓

1967年のMiles Quintet,ヨーロピアン・ツアーの記録。
正確には2つのセッションからなっている。
1)In Stockholm,SWEDEN, Oct.31.1967
2)In Karlsruhe,GERMANY, Nov.7.1967

話を簡単にするため、1曲に絞る。2)ドイツでの4曲目、Walkin’である。
信じられない速さで演奏されるこの曲。
超高速をたたき出すトニー・ウイリアムスとロン・カーターもめちゃくちゃ凄い。
モーダルなピアノで応酬するハンコックも凄すぎる。
しかし問題はウエイン・ショーターである。
ショーターの頭には数ヶ月前に死去したコルトレーンがよぎっていたに違いない。

ショーターのソロの終わりのほう(6分あたりから)、演奏しているのだけど、ほとんど音を出していない(モゴモゴモゴ)ーーというところには(失礼ながら、不覚にも)笑ってしまった。
これはモード・ジャズの究極、それは結局フリージャズだったというような演奏だ。

Milesという人は慎重にフリーとの距離を置いてきた人だが、このショーターの演奏を見守る目つきは、いつになく鋭い。

かくしてMilesのアコースティック・バンドは終焉を迎え、Milesは翌68年初頭から、スタジオにこもり、そうして出てきたのが”Miles In The Sky”だった。

エレクトリック・マイルスが出現する直前のライブ映像として、貴重なドキュメントである。
 

この日の演奏全ては下↓のDVDで見ることが出来ます。通して見ると(聴くと)このクインテットがいかに凄かったか分かって頂けるはずです。

A さん
・・・・・
B さん
で、何がいいたいんですか?
この演奏とBLUE GIANT がどう関係するんですか?
A さん
いやね、作者の石塚さんがショーターとハンコックにインタビューとかしてたからさ、この映像を思い出して、頭から離れないんだよね
B さん
確かに凄い演奏ですね。だけど
A さん
まず押さえたいのはジャズは1967年にここまで来ていたということ。本当はこれに合わせてコルトレーンの末期の演奏も聴いて欲しいんだけれど、それはちょっと難しいから
B さん
確かに凄いレベルですね。ハンコックもトニー・ウィリアムスのドラムも凄いです。ベースのロン・カーターは音は聞こえないけど、必死こいてますね。
A さん
凄いよね。一方コルトレーン末期はフリー・ジャズというかとんでもない演奏をしていた。そして40才で死んでしまった
B さん
この演奏はコルトレーンの死の4か月後ですね
A さん
そう、マイルス・クインテットの皆がコルトレーンの演奏とその最期を知っていた。とりわけ同じテナーサックス、ソプラノサックス奏者だったショーターは骨身に沁みるほど知っていたはず
B さん
・・・それで?
A さん
その後のショーターを見ると、まるでコルトレーンのことを忘れたように、マイルスバンドの後はジョー・ザビヌルと組んでウエザー・リポートみたいなバンドを作った。
B さん
コルトレーンはその後の全てのサックス奏者に影響を与えたと言われてますね
A さん
そう、実際その通りだもん。コルトレーンの影響がないサックス奏者はいない。あのアート・ペッパーさえ大きく影響された。スタン・ゲッツさえもね
B さん
・・・Aさんが大に「聴け!」と言っている、デヴィッド・マレイやジェイムス・カーターは?
A さん
モロに影響下にある。しかしコルトレーンを超えてはいない。2010年代にプロサックスプレイヤーをシリアスに志して、まして「世界一!」を目指すなら
B さん
このショーターを聴けと?そして後期コルトレーンを聴けと?
A さん
うーん、最低限聴いて欲しいよね。ショーターも音が大きいので有名だったんだよね。だけど、ここではちょっと違う。
B さん
コルトレーンを忘れるな・・・みたいな
A さん
うん。結局ね歴史の問題になるんだよね
B さん
歴史・・・ジャズ史ですか?
A さん
後から来るものの宿命として、前の人を超えなければならない
A さん
単純な追随でもいけない・・・
B さん
でも、今の大にそれを求めるのは酷じゃないですか?
A さん
ははは、そうだったね。この天才トニー・ウィリアムスのドラミング見たら玉田君は頭抱えるね。ちなみに17才でマイルス・グループに入ったトニーは、この時点でもまだ21才だったんだよね。

B さん
いや、だからまだ、早いって
A さん
うん、ちょっと焦り過ぎたね。ただ、この辺のことも念頭に置いて、書いて欲しいと思う訳。
B さん
はい、はい、石塚さんにそう言っておきます
A さん
ついでに、マイケル・ブレッカーとかボブ・バーグも聴いて欲しいね。大君には。フュージョンの申し子のようだったマイケル・ブレッカーも最後はコルトレ-ンを意識せざるを得なかったことを。

sponsored Link

John Coltrane in 1966

John Coltrane
1966年
福岡市民会館
photo by takashi honda

まとめ

何だか理屈ぽくて、説教くさくなってすみません。
でもAさんじゃないけど、ジャズ史の観点で見てしまうので、これからどう画かれるのか、取り越し苦労してしまいました。

そろそろJASSがSO BLUE に出演するところまで来ているらしいですね。ビッグコミックでは。

 

sponsored Link

 

 

 

この記事が気に入っていただけたら
いいね ! しよう

Twitter で

 - ジャズ,